- 著者
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友江 祥子
- 出版者
- 佛教大学大学院
- 雑誌
- 佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, pp.37-54, 2011-03-01 (Released:2011-05-11)
仮説を,大阪で派遣看護婦として働いていた20代女性の日記から検証する。すると見えてくることがある。それは女性の印象が「のんき」であるということだ。昭和16年当時は日中戦争のただ中であり,日本は完全な戦時下という状況であった。それにもかかわらず日記の中の日常は,現代の我々に伝えられる「戦争」というイメージからはほど遠い。不穏な社会情勢よりも女性にとって大切なことは,自分個人の将来,とりわけ婚約者との将来だった。このような点からも,女性の日常はまだ平穏であったと思われる。しかし戦時下であったことは事実であり,日記中には「戦争をすることへの躊躇」を感じさせない勇ましい文章が並ぶ。この女性は,こうしたアンビヴァレントな意識をもち,戦時下独特の不穏な空気のなか,平穏な生活を送っていたのである。
昭和16年
戦時下
日記
看護婦
日常生活