著者
松下 年子 河口 朝子 原田 美智 神坂 登世子 米山 和子 小林 一裕 大澤 優子 渡邊 裕見子
雑誌
アディクション看護 (ISSN:13497472)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.54-75, 2020-10

本研究では,新人看護師の教育や研修システム,看護部の新人看護師および看護師全体の教育に関する方針と実際,課題等を明らかにすることを目的に,インタビュー調査を実施した.対象病院は総合病院10施設,精神科病院2施設,リハビリテーション病院1施設の計13施設で,研究対象者の職位は看護部長4名,副看護部長2名,その他看護部教育担当者等8名の計14名であった.インタビュー内容を質的帰納的に分析した結果,【新人看護師の背景と配属先等の対処および,成長と課題】【離職とその理由,離職防止とリクルート対策】【新人看護師の教育体制と支援】【新人看護師への研修体制および全体の研修体制】【看護管理者・教育担当者のやりがいと課題】【働きやすい環境整備】の6カテゴリが抽出された.新人看護師の背景とその多様性,離職率と離職理由とそれに対する対応,離職者の傾向と採用の取り組み,またプリセプターシップ,新人看護師の不安や職場不適応とメンタルヘルスサポート,新人看護師の残業ヘの配慮,新人看護師を教育する側へのサポート等が集約された.さらに新人看護師のオリエンテーションと研修の実際やローテーション研修,新人研修の評価,2年目以降の研修プログラム,クリニカルラダー,院外研修への参加と助成の有無等が抽出された.加えて看護管理者・教育担当者が重点的に取り組みたいこと,自分自身の成長,人材育成の姿勢と課題が,最後に働きやすい環境整備として異動に関すること,子育て中の看護師に対する支援と課題,地域や他機関とのつながり等の実際が明らかにされた.
著者
松下 年子 デッカー 清美
雑誌
アディクション看護 (ISSN:13497472)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.89-96, 2019-03

精神科スーパー救急病棟の看護師の身体拘束と虐待についての認識を明らかにするために匿名の郵送式自記式質問紙調査を行い、55名から回答を得た。まず「拘束と虐待を関連づけて考えたことがあるか」を問うと、考えたことがある者は4割、ない者は4割を占めた。その理由についての自由記載を集約すると、【拘束は安全策、治療行為であり虐待ではない】【拘束はやむを得ない場合もあるが工夫も必要】【スタッフ側の都合や環境による拘束】【拘束への問題意識】【拘束しないことの徹底】の5カテゴリが見出せ、「高齢者の人権を守るという観点からの拘束や行動制限に対する考え」については、【必要があっての拘束】【拘束する上での留意点】【拘束せざるを得ない現状】【拘束が全て人権侵害なのか】の4カテゴリが見出せた。次に、「家族だったら拘束をどう思うか」については、「状況によっては仕方ないと思う」が8割を占めた。最後、「その他拘束や行動制限、虐待についての考え」では、【拘束や行動制限をする上でのスタッフ間の話し合いと当事者への説明】【拘束の実態の多様性】【その他】の3カテゴリが見出せた。看護師は身体拘束に対する相反する価値観やアンビバレントな感情を抱えながら拘束を行っている可能性がうかがわれた。この精神的負荷を軽減するためには、患者の危機へ対処する際は身体拘束を優先するが、危機を超えたら早急に身体拘束の解除に臨むという段階的なアプローチがより現実的であろう。また虐待の発生は、組織や体制に依拠する可能性が示唆された。(著者抄録)