著者
光本 いづみ 松下 年子 大浦 ゆう子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.185-196, 2008-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
7 5

訪問看護師の仕事負担感や就業継続意思と訪問看護の業務特性を明らかにした. 対象は福岡県内の訪問看護ステーションに勤務する看護師で, 自記式質問紙調査を実施した. その結果, 下記の事柄が明らかになった. 「就職前に考えていた仕事内容と実際との相違」「訪問以外の仕事の多さ」「判断を必要とする場面の多さ」「複雑な看護技術の多さ」を感じている人ほど仕事の負担感を大きいと考え, 「ステーションの将来性」「看護師の人数」「賃金」について肯定感を持つ人ほど仕事の継続意思を持っていること. また, 訪問看護師の就業意欲向上のために, 管理者が労務管理の意識を高めることやリアリティショックへの対策として体系的・系統的継続教育の実現を図る環境を整えることも継続意思を持つことの一助となることが示唆された.
著者
松下 年子 河口 朝子 原田 美智 神坂 登世子 米山 和子 小林 一裕 大澤 優子 渡邊 裕見子
雑誌
アディクション看護 (ISSN:13497472)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.54-75, 2020-10

本研究では,新人看護師の教育や研修システム,看護部の新人看護師および看護師全体の教育に関する方針と実際,課題等を明らかにすることを目的に,インタビュー調査を実施した.対象病院は総合病院10施設,精神科病院2施設,リハビリテーション病院1施設の計13施設で,研究対象者の職位は看護部長4名,副看護部長2名,その他看護部教育担当者等8名の計14名であった.インタビュー内容を質的帰納的に分析した結果,【新人看護師の背景と配属先等の対処および,成長と課題】【離職とその理由,離職防止とリクルート対策】【新人看護師の教育体制と支援】【新人看護師への研修体制および全体の研修体制】【看護管理者・教育担当者のやりがいと課題】【働きやすい環境整備】の6カテゴリが抽出された.新人看護師の背景とその多様性,離職率と離職理由とそれに対する対応,離職者の傾向と採用の取り組み,またプリセプターシップ,新人看護師の不安や職場不適応とメンタルヘルスサポート,新人看護師の残業ヘの配慮,新人看護師を教育する側へのサポート等が集約された.さらに新人看護師のオリエンテーションと研修の実際やローテーション研修,新人研修の評価,2年目以降の研修プログラム,クリニカルラダー,院外研修への参加と助成の有無等が抽出された.加えて看護管理者・教育担当者が重点的に取り組みたいこと,自分自身の成長,人材育成の姿勢と課題が,最後に働きやすい環境整備として異動に関すること,子育て中の看護師に対する支援と課題,地域や他機関とのつながり等の実際が明らかにされた.
著者
松下 年子 デッカー 清美
雑誌
アディクション看護 (ISSN:13497472)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.89-96, 2019-03

精神科スーパー救急病棟の看護師の身体拘束と虐待についての認識を明らかにするために匿名の郵送式自記式質問紙調査を行い、55名から回答を得た。まず「拘束と虐待を関連づけて考えたことがあるか」を問うと、考えたことがある者は4割、ない者は4割を占めた。その理由についての自由記載を集約すると、【拘束は安全策、治療行為であり虐待ではない】【拘束はやむを得ない場合もあるが工夫も必要】【スタッフ側の都合や環境による拘束】【拘束への問題意識】【拘束しないことの徹底】の5カテゴリが見出せ、「高齢者の人権を守るという観点からの拘束や行動制限に対する考え」については、【必要があっての拘束】【拘束する上での留意点】【拘束せざるを得ない現状】【拘束が全て人権侵害なのか】の4カテゴリが見出せた。次に、「家族だったら拘束をどう思うか」については、「状況によっては仕方ないと思う」が8割を占めた。最後、「その他拘束や行動制限、虐待についての考え」では、【拘束や行動制限をする上でのスタッフ間の話し合いと当事者への説明】【拘束の実態の多様性】【その他】の3カテゴリが見出せた。看護師は身体拘束に対する相反する価値観やアンビバレントな感情を抱えながら拘束を行っている可能性がうかがわれた。この精神的負荷を軽減するためには、患者の危機へ対処する際は身体拘束を優先するが、危機を超えたら早急に身体拘束の解除に臨むという段階的なアプローチがより現実的であろう。また虐待の発生は、組織や体制に依拠する可能性が示唆された。(著者抄録)
著者
松下 年子 野口 海 小林 未果 松田 彩子 松島 英介
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 = Japanese journal of general hospital psychiatry (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.142-152, 2010-04-15
参考文献数
7
被引用文献数
2

がん患者が受けた医療者による情報提供と,心のケアの実態を把握するために,インターネットを媒体とした質問調査を実施した。患者がとらえる心のケアは形式的なものではないこと,病名および再発告知(情報提供)の際の心のケアの質・量には幅があること,ケア提供者の89.7%と91.4%は主治医であることが示された。一方,病名告知に伴う自らの相談行為は55.8%に認められ,その相手はプライベートな関係者が圧倒的に多かった。治療中の相談行為は47.2%に認められ,そのうちの75.4%が相談相手を家族としていた。治療中に心のケアを受けた者は32.2%にすぎなかったが,ケア提供者は告知時と比較して主治医以外の医療職が多かった。情報提供の際のより積極的な心のケアの提供と,患者から相談を受ける体制の構築,治療中のがん患者への相談サービスの提供とアピール,主治医以外の医療職による心のケアの展開などの必要性が示唆された。
著者
松下 年子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_63-4_66, 2013

消化器外科病棟で手術を受ける65歳以上の患者84名を対象に,看護師が日本語版NEECHAM混乱・錯乱状態スケールを用いて,術後1~7日目までの患者の混乱・錯乱状態を評価した.その後看護師31名を対象に,NEECHAMの使用をルーチンワークとする可能性等について質問紙調査を実施したところ,「スケールを使用してせん妄の観察力や判断力がアップした」という者は全体の22.6%,「スケール使用による業務負担が大きい」という者は76.7%,病棟でのスケール使用のルーティン化については,「今の忙しい病棟では望まないが,もう少し余裕のある状況であれば望む」が35.5%,「望まない」が38.7%,「なんともいえない」が22.6%であった.今後の課題として,事前研修や業務量などの環境調整,NEECHAM評価をいかに患者ケアに生かすかという観点からのスーパービジョンや,事例検討会の開催等の必要性が示唆された.