著者
デッカー 清美 丸山 昭子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.718-724, 2015-11-30 (Released:2016-01-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

近年, 日本では父親の育児参加が叫ばれるようになり, 父親自身も役割行動を担おうとする動きがみられる。しかし, 多くの父親はその役割に戸惑い, 育児に関われないストレスを感じているといわれている。その背景には, 父親としての認識が大きく関与していると考えられる。そこで本研究では, 父親認識に関する国内外の文献を検索し, その動向や内容から父親認識を育む上で大切な要因について検討した。「父親 (father)」を固定とし,「認識 (recognition)」,「意識 (consciousness)」,「親役割 (paternity)」,「育児行動 (childcare)」,「育児満足度 (childcare satisfaction)」をキーワードとして, 国内では医学中央雑誌, 諸外国ではSCOPUS, CHINALを用いて, 2001年以降の文献を検索した。最終的に, 和文献 (専門書3冊含む) 27件, 英語文献34件を対象文献とし, 内容ごとに分類した。その結果, 対象文献の内容は, 1) 父親像, 2) 父親の育児参加, 3) 夫の関わりにおける夫婦の認識, 4) 父親の役割, 5) 父親意識の形成の五つのカテゴリーに分類され, サブカテゴリーとして20項目が抽出された。父親認識を育むには, 夫婦間の親密度を高め, 子育てへの教育支援, 子育てしやすい社会・職場環境を整えていくことが大切であることが示唆された。
著者
松下 年子 デッカー 清美
雑誌
アディクション看護 (ISSN:13497472)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.89-96, 2019-03

精神科スーパー救急病棟の看護師の身体拘束と虐待についての認識を明らかにするために匿名の郵送式自記式質問紙調査を行い、55名から回答を得た。まず「拘束と虐待を関連づけて考えたことがあるか」を問うと、考えたことがある者は4割、ない者は4割を占めた。その理由についての自由記載を集約すると、【拘束は安全策、治療行為であり虐待ではない】【拘束はやむを得ない場合もあるが工夫も必要】【スタッフ側の都合や環境による拘束】【拘束への問題意識】【拘束しないことの徹底】の5カテゴリが見出せ、「高齢者の人権を守るという観点からの拘束や行動制限に対する考え」については、【必要があっての拘束】【拘束する上での留意点】【拘束せざるを得ない現状】【拘束が全て人権侵害なのか】の4カテゴリが見出せた。次に、「家族だったら拘束をどう思うか」については、「状況によっては仕方ないと思う」が8割を占めた。最後、「その他拘束や行動制限、虐待についての考え」では、【拘束や行動制限をする上でのスタッフ間の話し合いと当事者への説明】【拘束の実態の多様性】【その他】の3カテゴリが見出せた。看護師は身体拘束に対する相反する価値観やアンビバレントな感情を抱えながら拘束を行っている可能性がうかがわれた。この精神的負荷を軽減するためには、患者の危機へ対処する際は身体拘束を優先するが、危機を超えたら早急に身体拘束の解除に臨むという段階的なアプローチがより現実的であろう。また虐待の発生は、組織や体制に依拠する可能性が示唆された。(著者抄録)