著者
中里 成実
出版者
システム・ダイナミックス学会日本支部
雑誌
システムダイナミックス (ISSN:24342025)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.31-45, 2019 (Released:2019-04-08)
参考文献数
8

銀行の貸出行動は実態経済と密接な関係があるとされ、一般的には景気上昇局面において貸出は増えると考えられている。しかしながら日本の銀行の預貸率は、アベノミクス(2012年)以降の景気上昇局面においても伸び悩みを見せている。各銀行が貸出可能額に対して様々な要因を検討し、貸出範囲を決定することは、銀行経営における重要な意思決定である考えられる。そこで本研究ではこの統計に表れない銀行経営における意思決定(リスク選好度)に焦点を当て、その原因を探るためにシステム・ダイナミックスの手法を用いて銀行業の貸出モデルを作成し、1997年から2017年までの20年間の貸出行動を観察した。その結果、この20年間の貸出可能額に対する貸出の割合は、70-60%と一定の範囲に止まっているが、特に2006年以降は低位に留まっていることが示唆された。