著者
二宮 祐
出版者
高知県農業技術センター
雑誌
一橋大学大学教育研究開発センター年報 (ISSN:09177701)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.63-71, 2010

無核性を持つブンタン系統「90T9」を育成した。「90T9」は、'土佐文旦'の自然交雑実生で、露地栽培において次のような特性を示す。1. 樹勢は強く、樹姿は直立性である。春葉にはうねりがあり、亜主枝全体の葉が激しく黄化する現象がまれに認められる。2. 果実の外観は'土佐文旦'に似るが、大きさはやや小さい。3. 糖度計示度は'土佐文旦'と同程度であるが、クエン酸含量は低い。12月中旬の収穫時において、既に生理的なす上がりが認められる。4. 単為結果性が認められ、他品種の花粉を人工受粉しても種子数は非常に少なく、完全種子は1果あたり0.4個、不完全種子は0.9個程度である。5. 無核果となる要因は、平均で1子房あたり0.6個と胚珠数が極端に少ないためで、既存のカンキツ品種にはない不稔性を示す。6. 花粉は稔性を持つが、'はやさき'とは不親和がみられる。