著者
神谷 雅仁
出版者
上智短期大学
雑誌
上智短期大学紀要 (ISSN:02877171)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.41-71, 2008

本論文では英語学習を(英語の)文化学習の一部と位置付け、日本におけるアメリカ英語への過度の偏重は日本人学習者のアイデンティティー危機、あるいは社会全体への言語支配につながると警告する。英語は今や様々な国や地域で使用される言語になったことから、それぞれの英語を正当な、そして独立した固有の言語としてその言語権を認めるWorld Englishesという考え方が広まっている。そんな中、本論文では日本の英語教育に対して、(1)日本に英語教師として迎え入れる英語話者の国籍(よって英語のバリエーション)をより多様にする、(2)言語使用の際の社会言語的適切性に関して、アメリカ英語の適切性を規範とし、その理解や実践を強いるのではなく、日本人としての適切さ、日本語使用に見られる適切さを大事にしていく、(3)内容中心教授法を採用し、国際理解や世界の多様性について英語で学ぶ中で英語のスキルアップをはかる、という3つの提言がなされる。
著者
小林 宏子
出版者
上智短期大学
雑誌
上智短期大学紀要 (ISSN:02877171)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.73-84, 2008

本論は、聖マリア修道女会創立400周年に当たり、修道会創立に到る聖ジャンヌ・ドゥ・レストナックの体験を、挫折の中で見出されたアイデンティティという観点から論述し、アイデンティティ確立の課題に直面する学生達に、模範と励ましを提示する試みである。ジャンヌは、世間からは理想の道の挫折と評価される、観想修道会からの退会という体験の中で、神から新しい修道会創立への招きを受け取り、その実現へと踏み出して行く。この新しいアイデンティティの受諾と実現のためには、以前の理想像としての自己を放棄する必要があった。彼女に、この自己放棄を果たさせ、新しい可能性へと開く勇気を与えたのは、イエスの生き方を理想とし、そのイエスを自己のアイデンティティの原型として受け取る信仰であり、イエスに一致して神が示す招きを果たそうとする愛である。このジャンヌの経験は、挫折の中から、新たな道を見出すキリスト教信仰の力強い模範である。