著者
高野 敏樹
雑誌
人間福祉研究 = The human welfare review
巻号頁・発行日
no.5, pp.21-34, 2003-03-25

憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」としての生存権を保障しており,この規定が福祉国家としてのわが国の法的基礎をなしている。しかし,この生存権の法的性質をどのようにとらえるかという問題については,これまでも争いのあるところであり,とりわけ最高裁の一連の判決においては事実上,生存権の権利性は希薄化しているといってよい。生存権の司法的実現という視点からは,いずれの学説および判例上も,問題は立法・行政裁量の効果的な統制と,適切な司法審査基準の構築と適用にかかっていることを指摘した。
著者
高野 敏樹
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-19, 2004-03-20

憲法制定権力論は国家の基本法である憲法を制定する始源的な権力である。本稿ではこの理論を体系化したフランス革命期のシェイエスの理論をとりあげて,その理論の法的・政治思想的意味を,アンシャン・レジームの思想基盤であった神権主権論および統治契約理論と対比して考察し,シェイエスの憲法制定権力論の「主意的」側面が近代憲法理論の形成の原動力となったことを指摘した。