著者
松田 輝美 津田 彰 Terumi Matsuda
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 : 久留米大学文学部心理学科・大学院心理学研究科紀要 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.12, pp.34-43, 2013

本研究の目的はジャーナル・アプローチが在日中国人留学生の精神的健康に及ぼす効果の検討とプログラムの評価を量的な質問紙調査と質的な面接を用いて行うことである。研究1では,中国人留学生19名を無作為にジャーナル・アプローチ介入群と待機群に分けた。3か月の介入前後にGeneralHealthQuestionnaire-28(GHQ-28)中国語版で精神的健康を測定した。2要因分散分析の結果,両群に有意差は認められなかった。介入群のうち半数が中断したが,彼らは受験が気がかり,あるいは周りの目が気になっていたことが明確になった。研究2では,プログラムの評価と介入中断の原因を特定するために,介入群の中国人留学生6名を対象に半構造化面接を行った。その結果,プログラムに参加した一部の留学生にストレスの緩和や気持ちの変化があることが示された。
著者
藤林 まど花 園田 直子 Naoko Sonoda
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 : 久留米大学文学部心理学科・大学院心理学研究科紀要 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.11, pp.61-73, 2012

本研の目的は,大学生の感情表出方略,なかでも"言語化"に注目し,その実態と体調不良につながる要因を探ることであった。対象は大学生325名であった。重回帰分析の結果,「体調不良」と「ネガティブ感情」「爆発型」との間に有意な正の関連がみられた。さらに,決定木の結果から,大学生においては,日常的なネガティブ感情の感じやすさが体調不良に大きく関連しているが,体調不良につながるうえで絶対条件ではなく,爆発型の感情表出方略や,ソーシャルサポートの低さの組み合わせで体調不良が高くなることが示唆された。
著者
緒方 南奈 徳田 智代 原口 雅浩
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 : 久留米大学文学部心理学科・大学院心理学研究科紀要 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
no.15, pp.9-16, 2016

本研究では,母親に対する甘えが大学生の精神的自立に及ぼす影響について,母親の養育態度を踏まえて検討する。研究 1 では,大学生と大学院生89名を対象に質問紙調査を行った。その結果,現在の「相互依存的甘え」は精神的自立の「適切な対人関係」にプラスの影響を及ぼし,現在の「屈折した甘え」は,精神的自立の 「価値判断・実行」にマイナスの影響を及ぼしていた。特に,母親に対して素直に甘えを表現し,うらみすねみといった気持ちを持たない人は,精神的自立ができることが分かった。また,母親の過保護な養育態度は,精神的自立にマイナスの影響を及ぼしていた。研究 2 では,大学生と大学院生108名を対象に,甘えと精神的自立について自由記述式の質問紙調査を行った。その結果,子どもの甘えに対して,母親が一貫して子どもの甘えを受け入れる態度をとることが,「 自立できる甘え」にとって重要であることが示唆された。This study will examine how university students' Amae toward their mothers affect their psychological independence, based on the mothers' bonding. In Study 1, a questionnaire survey was administered to 89 undergraduate and graduate school students. As a result, we found that current" mutually-dependent Amae" has a positive effect on the "appropriate interpersonal relationships" factor of psychological independence. However, "distorted Amae"was found to have a negative effect on the "value judgment and execution" factor of psychological independence. In particular, people who honestly express Amae toward their mother without feelings of resentment or peevishness are able to be psychologically independent. In addition, overprotective bonding by the mother was found to have a negative effect on psychological independence. In Study 2, an open-ended questionnaire survey on Amae and psychological independence was administered to 108 undergraduate and graduate school students. The results suggested that it is critical for mothers to provide a consistent positive response to their child's Amae for the child to develop "independent Amae."