著者
花田 勝美 竹下 繁
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部農場研究資料 (ISSN:03863522)
巻号頁・発行日
no.13, pp.32-37, 1991-03

地中海沿岸の山地や丘陵地を原産地とするシクラメンは冷涼寡雨の気候を好む植物である。それゆ え,我が国の夏季の6,7,8月及び9月の気温が30℃を越す環境下でのシクラメンの栽培は花芽の 分化と開花を著しく抑制すると言われている。 本調査は例年にない暑さに見舞われた1990年と,平均的な夏季の気温で経過したと考える1988, 1989の両年のシクラメンの時期別販売鉢数を調査し,比較することにより,1990年の夏期の高気温が シクラメンの生育と開花に与えた影響を検討したものである。その結果, (1)1990年の夏季は最高気温38℃を記録し,30℃以上の日が73日にも及び,1988年及び1989年の約 2倍の日数であった。 (2)1990年は1988,1989の両年に比較して,アカダニとハスモンヨトウが異常に発生した。 (3)1990年のシクラメンは1988年,1989年に比較して,初出荷と出荷最盛期が約1ケ月遅れた。 以上の如く,西南暖地におけるシクラメンの栽培は,平坦地では夏季の気温が30℃を越える日数が 40~50日以上になると,シクラメンの開花時期が遅延してくるものと推察される。このことは,シク ラメンは年内に販売すべしと言う鉄則に反することになり,シクラメンの栽培農家にとっては高冷地 栽培を含めた夏季の高温の回避策の検討が強く望まれる。