著者
東 朋美 森 理恵
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 生命環境学 (ISSN:18826946)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.1-17, 2008-12-25

日常的着物着用者が「なぜ着物を着るのか」ということを調査した結果,それぞれの着用者は,現代の着物の問題点を次のように克服していることを明らかになった。価格と販売方法については呉服店と親しくなることや古着店や骨董市,ネットオークションを利用すること。着付けや手入れのむずかしさについては,同じく呉服店と親しくなることや,近所に洗い張りの専門家を見つけること,着付けや手入れの技術を習得した母や祖母の身近にいること,和裁などを習得して自分で技術を身につけることである。とくに古着を着用する場合には,いつでも利用できるメンテナンスの方法を確保することが必須となる。着物のルールについては,わずらわしいと感じるより,着物特有のしきたりを身につけることで自分を高めようとする意識が見られた。友人のネットワークが日常的な着物の着用と関係していること,着物の「伝統文化価値」が着用者にとって着物の魅力となっていることも明らかになった。