著者
齋藤 陽一
出版者
新潟大学
雑誌
大学教育研究年報
巻号頁・発行日
vol.9, pp.5-7, 2004-03

音声ファイルの作成には、ローランド社のオーディオキャプチャー用の機器、UA-20(図1)を購入して、利用した。図の右下の部分がオーディオ入力用の端子で、ラジカセのヘッドフォン端子から、ここへケーブルをつなぎ、USBケーブル(図の左上の部分)でコンピューターのハードディスクに音声を取り込む。実際には、授業中にカセットテープからMDに録音したものを使っていたため、このMDから録音したが、普通のカセットでも高音質で録音することができる。録音する際に、単語一つ一つ、カセットテープをとめて、ハードディスクへの録音をするということも可能だが、煩瑣であることは否めない。そこで、今回は、10課まである教科書の1課ずつの音声ファイルを作成し、一つ一つの単語の部分をコピー&ペーストすることで、単語一つ分のファイルを作った。例えば、図2が、1課分の音声ファイルの波形であるが、それを拡大(このソフトでは、表示する音声ファイルの長さを変更することができる)したのが、図3である。この一つの波が単語1個分にあたる。これをコピーして、新規のファイルにペーストして、音声ファイルを作成した。授業時間は月曜日の1限と水曜日の2限、学生数は、当初の登録学生数は理学部、工学部の27名、12月末現在で、26名である。教室は、学期のはじめは、普通教室が割り当てられていたが、水曜日の2限は、第3LL教室に変更し、パソコンを利用したLL装置を用いた。最初の計画では、昨年までこの教室のメインコンピュータ一にインストールされていた教材配布ソフトを利用し、各学生のブースに教材を配布するつもりであったが、このソフトがウィルス対策が施されていないという理由で、アンインストールされており、利用することができなかった。また、昨年は、学生が教室外のWEBサイトを利用するには分室アカウントを取得する必要があったが、今年度は、正式に確認はしていないが、その必要はないようであった。そのため、教材をすべて報告者の研究室のサーバーにおくことも考えたが、27名の学生が一度にアクセスした場合にそれに対応できるだけの性能を有していないので、結局、進度に合わせて、学習を終了した課までの単語練習ソフト(昨年も利用したもの)に、音声ファイルを付加したものをCD-RWにコピーし、それを授業開始時に学生に回し、各ブースのコンピューターへコピーしてもらった。12月の最後の授業の際に、各課の単語問題とその音声ファイル、動詞の変化の問題、名詞の格変化の説明、さらに昨年度の最終試験の問題をWEBブラウザを利用して閲覧することができるものをCD-Rに焼いて、配布した。
著者
ベーレント B.
出版者
新潟大学大学教育開発研究センター
雑誌
大学教育研究年報
巻号頁・発行日
vol.13, pp.155-172, 2009-03

ボローニャ・プロセスは、一つの欧州高等教育圏を築くという文脈をもち、1998年および1999年以降いろいろな変化をもたらしてきた。これらはとくに、生涯学習社会を背景とする教育・学習文化の変化と、構造(卒業証書から学士課程や修士課程へ)の変化が含まれている。ボローニャ・プロセスでは「21世紀高等教育に向けた変革のための欧州協議事項」の決議や勧告が、受け入れられもっと先に進められている。この欧州協議事項は、1997年のパレルモにおけるフォーラムの成果である。パレルモ・フォーラムは、「欧州大学学長会議(CRE)」(現、「欧州総合大学協会(EUA)」)と「ユネスコCEPES(ユネスコ欧州高等教育センター)」が、1998年のユネスコ世界会議「21世紀の高等教育 : その未来図と対策」の準備のために共催したものである。「欧州高等教育スタッフ・ディベロップメント・ネットワーク(ENSDHE)」を1985年よりコーディネートしてきた、ユネスコCEPESは、ユネスコ世界会議開催中に国際パネルディスカッション「アカデミック・スタッフ開発:継続的使命」を実施した。筆者は、その進行過程にドイツ代表のコーディネーターとして関わると同時に、「欧州高等教育スタッフ・ディベロップメント・ネットワーク」の代表として、この国際パネルディスカッションに参加した。筆者が行ってきた、教授中心から学習中心の教授法への転換および東西欧州のアカデミックスタッフ・ディベロップメント(ASD:日本のFDにあたる、以下FD)に関する比較研究は、ユネスコ世界会議に備えてであった。(Berendt 1998, 1999)本論は、まず全般的な概論を説明した後、学生の学習に関する研究に基づいたFDがどのように始まり、筆者がFDにどのようにかかわってきたか述べる。次に、1970年から1998年にいたる欧州とドイツにおけるFDに関する画期的な出来事を説明するが、ここでは、ドイツのFDが欧州を背景として展開されていることが示されるであろう。1999年以降については、ドイツにおけるFDブームを論じ、筆者の実践から構想事例(「動機づけやトレーニング方法、ベルリン自由大学とアレッポ大学(シリアの共同プロジェクト) について述べる。これらの構想は、かなり多くの大学教員をFDワークショップやFD活動へ参加するよう動機づけられることを証明した。特別な節として次に、45力国の担当大臣によるロンドン・コミュニケ欧州高等教育圏をめざして」(2007年)に応じるヨーロッパと特にドイツにおけるFDの最近の発展や展望を取り扱う。 FDは質保証の中核的要素とみなされている。最後の節は、日独のFD共同を継続するためのいくつかの結論をまとめている。そこには行動計画や更なる議論をするための一般的な問題が含まれる。また、AHD(ドイツ大学教授法研究協会)認定委員会(AHD-AKKO)に関する情報や、2000年から2007年までに評価認定されたワークショップやモジュール、プログラムに関する情報も取り扱っている。