著者
小出 寧
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実社心研 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.41-52, 1999

本研究では, 形容詞による性格特性語によらず, 行動や意識による項目で, 男性性, 女性性に加え, 女性のセックス・アピールの3側面からジェンダー・パーソナリティ・スケールの作成を行ない, 信頼性・妥当性を確かめることを目的とする。その際, 構成概念妥当性を確かめるため, 性役割行動とフェミニスト志向を取り上げる。方法は質問紙法で, 学生 (男性117人, 女性117人) を対象に調査を行なった結果, 尺度の信頼性・妥当性が確認され, 主に次の知見を得ることができた。それは, (a) ジェンダー・パーソナリティ・スケールは性別との対応関係の高い尺度であり, (b) その下位尺度間の関連から, 女性にとってセックス・アピールとは, 単に女らしさの強調といった意味合いだけでなく, 女性が男性中心社会の中で自己を主張していく表現法としての意味合いも込められていると推察され, (c) 男女を問わず男性性の高い人が議長を快く努められ, 男女を問わず女性性の高い人がお茶くみを快く努めることができ, (d) 女性は, 男性性が高いほどフェミニスト志向が強くなり女性性が高いほどフェミニスト志向が弱くなることが判明した。
著者
磯崎 三喜年
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実社心研 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.49-60, 1979
被引用文献数
2

本研究は, 社会的促進現象にみられる他者存在と個人行動との関わりをより明確にするため, 課題の反応しやすさの程度, 存在する他者の人数およびその存在形態が個人の遂行にどのような影響を与えるかを, 共行為・聴衆両事態において検討し, あわせて両事態での効果の比較を行なった (実験I: 共行為事態, 実験II: 聴衆事態)。<BR>被験者は大学生144人 (男女各72人)。課題はアルファベットの並びかえ作業であった。<BR>主な結果は次のとおりである。<BR>1. 反応しやすい課題は, 共行為・聴衆いずれの事態でも他者存在により, その正反応数が増加し, 特に共行為事態では誤反応数の減少もみられた。反応しにくい課題は, 聴衆事態においてむしろ誤反応数が増加した。<BR>2. 存在する他者の人数による効果の違いは共行為事態においてはみられず, 聴衆事態において聴衆が1人の場合より聴衆が3人の場合に, 反応しやすい課題での促進効果がより大となる傾向を示した。<BR>3. 他者の存在形態の違いによる課題遂行量の差は, いずれの事態においてもみられなかった。<BR>4. 促進のみられた課題の正反応数を試行ごとにみると, その効果が特に前半に集中していることが示された<BR>以上の結果から共行為効果と聴衆効果について若干の検討が加えられた。