著者
橋本 剛明 唐沢 かおり 磯崎 三喜年
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.76-88, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
29
被引用文献数
4 2

大学生が所属するサークル集団は,フォーマルな組織とインフォーマルな集団の双方の特徴を併せ持った集団であり(新井,2004),本研究はこれを準組織的集団と位置づけた。その上で,サークル集団における成員と集団とをつなぐコミットメントのモデルを探り,検討を加えることを目的とした。具体的には,組織研究の領域における3次元組織コミットメントのモデル(Allen & Meyer, 1990)を基盤に,サークル・コミットメントを測る尺度を作成し,学生205名を対象に調査を行った。その結果,サークル集団におけるコミットメント次元として,情緒的コミットメント,規範的コミットメント,集団同一視コミットメントの3因子が抽出された。さらに,それぞれのコミットメント次元の規定要因に関して,集団がフォーマル集団に近い程度を表す集団フォーマル性との関連を含めて分析を行った。情緒的コミットメントは課題および成員への集団凝集性により規定されており,また,課題凝集性と集団フォーマル性の交互作用が示唆された。規範的コミットメントと集団同一視コミットメントはともに,集団フォーマル性と成員凝集性によって規定されていることが認められた。
著者
磯崎 三喜年
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実社心研 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.49-60, 1979
被引用文献数
2

本研究は, 社会的促進現象にみられる他者存在と個人行動との関わりをより明確にするため, 課題の反応しやすさの程度, 存在する他者の人数およびその存在形態が個人の遂行にどのような影響を与えるかを, 共行為・聴衆両事態において検討し, あわせて両事態での効果の比較を行なった (実験I: 共行為事態, 実験II: 聴衆事態)。<BR>被験者は大学生144人 (男女各72人)。課題はアルファベットの並びかえ作業であった。<BR>主な結果は次のとおりである。<BR>1. 反応しやすい課題は, 共行為・聴衆いずれの事態でも他者存在により, その正反応数が増加し, 特に共行為事態では誤反応数の減少もみられた。反応しにくい課題は, 聴衆事態においてむしろ誤反応数が増加した。<BR>2. 存在する他者の人数による効果の違いは共行為事態においてはみられず, 聴衆事態において聴衆が1人の場合より聴衆が3人の場合に, 反応しやすい課題での促進効果がより大となる傾向を示した。<BR>3. 他者の存在形態の違いによる課題遂行量の差は, いずれの事態においてもみられなかった。<BR>4. 促進のみられた課題の正反応数を試行ごとにみると, その効果が特に前半に集中していることが示された<BR>以上の結果から共行為効果と聴衆効果について若干の検討が加えられた。
著者
中嶋 佳苗 磯崎 三喜年
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.61-69, 2014-03-31

本研究は,「ふたりきょうだい」に焦点をあて,「きょうだい」関係における対人魅力の検討を行った。研究1では,日本の大学生96名を対象にきょうだいにおける対人魅力尺度を作成し,研究2では,研究1で作成した尺度を用いて性格の社会的望ましさと類似性がきょうだいの魅力に与える影響を検討した。研究1より,きょうだいにおける対人魅力尺度は「交流因子」「信頼因子」「誇り因子」の3因子全15項目の構造であり,高い信頼性があることが示された。研究2では,先行研究より,性格の社会的望ましさの方が性格の類似性よりもきょうだいの魅力に与える影響が大きいという仮説をたて検討を行った。その結果,仮説を支持する結果が得られ,きょうだい関係においても類似性の効果よりも社会的望ましさの効果の方が魅力判断における影響が大きいという,これまでの知見と一致する結果が得られた。
著者
池田 亜紗 磯崎 三喜年
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.23-32, 2021
被引用文献数
2

<p>本研究では,大学生を対象に,対人関係プロフィールテストの日本語版を作成し,過度に依存に偏る過剰依存,過度に自立にこだわる分離,自立と依存のバランスがとれたヘルシー・ディペンデンシー(healthy dependency,以下HDとする)の3つの下位尺度と,援助要請行動および援助要請スタイルとの関連を検討した。HDは援助要請行動と正の,分離は援助要請行動と負の関連を示した。過剰依存は援助要請過剰型と正の関連,分離は援助要請過剰型と負の,援助要請回避型および援助要請自立型と正の関連,HDは援助要請過剰型および援助要請自立型と正の,援助要請回避型と負の関連を示した。また,HDは援助要請行動を媒介して適応感を高めるという仮説モデルの検討も行ったが,媒介効果は示されず,HDから適応感への直接効果のみ示された。HD独自の効果が適応感を予測することが示唆された。</p>
著者
橋本 剛明 唐沢 かおり 磯崎 三喜年
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.76-88, 2010
被引用文献数
2

大学生が所属するサークル集団は,フォーマルな組織とインフォーマルな集団の双方の特徴を併せ持った集団であり(新井,2004),本研究はこれを準組織的集団と位置づけた。その上で,サークル集団における成員と集団とをつなぐコミットメントのモデルを探り,検討を加えることを目的とした。具体的には,組織研究の領域における3次元組織コミットメントのモデル(Allen & Meyer, 1990)を基盤に,サークル・コミットメントを測る尺度を作成し,学生205名を対象に調査を行った。その結果,サークル集団におけるコミットメント次元として,情緒的コミットメント,規範的コミットメント,集団同一視コミットメントの3因子が抽出された。さらに,それぞれのコミットメント次元の規定要因に関して,集団がフォーマル集団に近い程度を表す集団フォーマル性との関連を含めて分析を行った。情緒的コミットメントは課題および成員への集団凝集性により規定されており,また,課題凝集性と集団フォーマル性の交互作用が示唆された。規範的コミットメントと集団同一視コミットメントはともに,集団フォーマル性と成員凝集性によって規定されていることが認められた。<br>