著者
池田 真生子 今井 裕之 竹内 理
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.17, no.01, pp.5-19, 2017-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
16

本研究の目的は,外国語(英語)活動の効果的指導につながる,持続可能な校内研修システムの構築を行い,その成果検証を通して,より良い研修モデルの1 形態を提案することにある。研修システムの構築では,先行研究を参考にしながら,1)持続性を持たせること,2)教員自ら問題意識を持ちその解決を図ること,3)次の世代の育成も同時に可能とすること,4)効果の検証の仕組みを取り入れ,常にシステムの改善が図れること,の4点を原則とした。参加校は,同一市内にある平均的な小学校3校で,研修の支援には当該市内にある大学の大学院生7名(支援員)が参加した。校内研修の内容は,参加校教員間での討議の結果,A)教室英語の効果的活用とB)活動案の作成方法に設定し,計6回程度(5ヶ月間,毎回約50 分)実施された。データは,参加教員(集団討論記録とアン ケート)と管理職教員(個別インタビュー記録とアンケート),そして大学院生の支援員(ログ記録とインタビュー,アンケート)より収集された。分析は,インタビュー,ログ記録については質的におこない,アンケートは記述統計で処理した。その結果,今回提案した校内研修システムが,外国語(英語)活動実施に関わる不安の軽減に対して,一定の成果を上げたことが確認された。また,このような形態の研修が,満足度の指標で7割近い教員から支持されており,その理由としては,彼らが抱いている不安の原因をピンポイントに解決していく可能性があるからだ,ということも分かった。一方で,管理職教員の研修への関わり方や,(システムの)持続性をどう実現していくのかなどに,解決すべき課題があることも明らかになった。
著者
久保 稔 金森 強 中山 晃
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4-18, 2012-03-20 (Released:2017-10-05)

本稿では,ICT (information and Communication Technology)を利用した特別支援学級における自立活動という枠組みでの英語活動の実践内容と,その際の留意点,及び平成23年度から必修化された「外国語活動」を特別支援学級で行う際の課題と可能性について報告する。平成22年度に,特別支援学級に在籍する児童(6名)を対象に,自立活動の枠組みで,情緒の安定を図るとともに,友だちとのかかわり方や集団での適応性を高めることめざし,「デジタル読み聞かせ」と「What's missing?」というICTを活用した2つの教材を作成し,英語活動の研究授業を行った。実践の成果として,スキャナで本を読み取りそれを大画面テレビに映し出して読み聞かせを行う「デジタル読み聞かせ」では,子どもたちの「本への興味関心を高める」とともに,「集中力の向上」を図ることができた。また,テレビ画面上に提示しているカードを1枚(または数枚)消し,消えたカードを答えさせるゲーム「What's missing?」では,参加児童は友だちと協力し合いながら勝敗を気にせず楽しく活動することができた。授業参観者からは,「集中力を持続させるのに効果的であった。」,「リハビリ的要素のある活動が含まれていた。」「教師の発音やイントネーションを真似するなど,英語に慣れ親しむ姿が見られた。」等のフィードバックを得られた。今後の特別支援学級における外国語活動では,ICTを利用することで,視覚優位である児童への理解支援や,児童の興味・関心をひきつけることができること,積極的な活動への参加が促せる等の利点があることが示唆された。
著者
渋谷 玉輝
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.44-56, 2012-03-20 (Released:2017-10-05)

本研究は,小学校4年生の教科書で出てきたカタカナ表記の語を英語母語話者が英単語として発音する場合,どの程度,児童がカタカナ語として認識できるかを調査することを目的とした。英語母語話者に依頼して録音した39話を,3つのグループの児童に横断的に聞かせ,その語をカタカナで表記させた。その結果,正答率が高い単語は,lemon, bus, mama, pen, juice, sport, time, cake, orangeの9語であり,lemon, bus, mama, pen, juice, sportの6語は正答者数が8割を超えていた。これらの単語は,mama以外は,すべて『英語ノート』で取り扱われる語彙リストに含まれていた。一方,正答率の低い単語では,world, hundred, leagueの3語で正答者かいなかった。これらの単語の特徴を明らかにするために,正答にならなかった児童の回答を分析したところ,児童は知っている類似する単語に置き換えたり,音声的に認知した文字で答えようとしたりしていた。全体としては,他の教科書や副読本に出てきたカタカナ英語を母語話者が英語として発音した場合,児童がカタカナ語で正確に表記した割合は,36.75%であった。以上の結果から,カタカナ英語において「表記しやすいカタカナ英語」「表記しにくいカタカナ英語」のそれぞれの特徴を分析し,カタカナ英語を活用するための具体的な方法の手がかりを提案した。