著者
高橋 幸裕
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.85-102, 2015-12-25

高齢者介護では利用者のQOL(Quality of life:生活の質)が重視されている。しかし、政策的には人生の最後のあり方(死の迎え方)について十分に検討されてこなかった。その背景に、かつて日本では日常生活と死は密接したものであったが、医学の進歩に伴って延命治療が重視された結果、家庭から遠ざかってしまったことにある。1976年には在宅死よりも病院死の割合が上回って以降、日常生活の中で死を経験する機会が失われてしまうことになった。他方、介護職の養成テキストをみると、死が差し迫った利用者と家族への支援方法やその後の対応については僅かな記述しかなく、十分に意識されたものとはなっていない。このような実態を踏まえて、在宅介護現場では看取りに対してどのような課題があるのかを整理した。その結果、在宅介護現場では看取りを希望する利用者・家族に対し、どのような実態と課題があるのかを検討するために聞き取り調査を実施した。ホームヘルパーは利用者が生き続けることを前提とした介護サービスを提供していることから、利用者や家族から看取り支援を依頼された際に看取りに関する経験不足だけでなく医学的知識がないことを理由に戸惑いや不安を感じていることが明らかとなった。