著者
赤澤寿美 木下 みどり 川手 亮三 山村 安弘
出版者
広島大学医学出版会
雑誌
広島大学医学雑誌 (ISSN:00182087)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.119-129, 2001-10-28
被引用文献数
1

しびれは患者には苦痛で不安な症状であり, 医療者側にとっても病気の診断と経過観察の上で見過ごすことができないものである。しかし, しびれに関しては神経医療分野以外で研究対象に取り上げられることは少なく, 患者がしびれを訴えた場合にも, それに対処する医療者の姿勢はともすれば消極的になりがちである。その理由の一つは, しびれが他者にとっては把握しにくい自覚症状であるからである。本研究では, 糖尿病患者726名で, しびれの客観的把握と看護支援の検討を試みた。アンケートは第1段階でしびれの有無ごとの分類, 第2段階でしびれ無群(I群), 現在しびれ有群(II群), 過去にしびれ有群(III群)の3種類に区分した.有群281人(II, III群)のうち, しびれと, それに伴った自律神経障害, およびそれらによる不快感や日常生活支障を感じた者は194人で, 有群の69.0%, 対象者全体の26.9%を占めた。しびれの強度と日常生活支障項目(25項目)数は有意に相関しており, 精神的支障は約4割, 身体的支障は約6割であった。支障項目のうち, 手指を使用する項目と上肢のしびれ感との関連が有意であり, 特に利き手の可能性が高い右上肢にその傾向が顕著であった。25項目中, 頻度の高い上位14項目で精神的支障項目, 全身・下肢支障項目, 上肢支障項目に分類し, 全身・下肢支障項目+上肢支障項目を身体的支障項目とすると, しびれの強度が強いほど精神的支障が占める割合は増加し, 身体的支障が占める割合は減少し, 身体的支障は精神的支障に影響を与え, 精神的支障の背景には強度のしびれとそれに伴う身体的支障が存在している可能性が高かった。看護者は, 身体的支障への支援だけでなく, しびれという「体験」を認識・理解し, 個々人にあった精神的支援を行うことが重要だといえる。
著者
内海 兆郎
出版者
広島大学
雑誌
広島大学医学雑誌 (ISSN:00182087)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.145-153, 2002-12-28

日本中毒学会「分析のあり方検討委員会(現分析委員会)」による,分析結果が治療に有用とされる15品目の中毒起因物質のうち,テオフィリンを除外した14品目について,臨床現場で得られる少量の生体試料からどれだけ迅速に何種類の検査が可能であるかについて検討した。本システムを構築するにあたり,生体試料を分析対象とした検査法のなかった有機リン系農薬,アセトアミノフェンは独自に開発し,環境検査用に市販されている検出キット(メタノール,青酸化合物,ヒ素化合物)は,生体試料に適用できるよう検討した。その結果,市販されていた5種のキット,独自に間発した2種の検出キットと2種の反応系によって,試料(尿および血清)1mlから14品目の中毒起因物質を1名の検査者が2時間で推定できた。また,実際の中毒4例に本システムを用いたところ,中毒起因物質の推定が可能であった。それぞれの検査法は注意点や改良点がいくつかあるが,臨床現場で得られる少量の試料から中毒起因物質の推定が可能となり,治療方針を決定するうえで有用であることが示唆された。