著者
乾 明夫 浅川 明弘
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 = Japanese journal of psychosomatic medicine (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.29-38, 2011-01-01
参考文献数
32
被引用文献数
1

脳・消化管ペプチドは,脳と消化管の双方に存在するペプチドであり,消化管機能の調節のみならず,食欲・エネルギー代謝や情動,学習・記憶に深くかかわると考えられている.食欲・体重調節に関しては,1994年のレプチンの発見以来,その概要が明らかになり,脳・消化管ペプチドはレプチンの下流に存在し,体脂肪量の過不足に応答する食欲・体重調節機構の根幹を担うことが証明された.脳・消化管ペプチドのヒト行動に及ぼす役割に関しては,動物での成績に加え,血中・脳脊髄液中ペプチド分泌動態やペプチド投与効果の観察など,ごく限られた知見しかない現状にあった.しかし,近年の遺伝子解析技術の進歩や,ペプチドからの創薬,脳画像解析技術の進歩などから,脳・消化管ペプチドのヒト行動に及ぼす役割が明らかになりつつある.脳・消化管ペプチドがどこまで,われわれの行動を規定しているかは大問題であるが,そのアプローチ法と問題点について述べた.