著者
網谷 東方 網谷 真理恵 浅川 明弘 乾 明夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1013-1022, 2016 (Released:2016-10-01)
参考文献数
37
被引用文献数
1

悪液質がもたらす栄養不良には, 食欲不振が大きく影響している. さらに, 炎症性サイトカインに誘発される全身の炎症反応による代謝異常のため, 骨格筋分解の亢進, インスリン抵抗性, 脂質分解の亢進などの同化障害と異化亢進された状態にある. この代謝障害が高度になり, 悪液質のステージが, “前悪液質 (precachexia)”, “悪液質 (cachexia)”, “不応性悪液質 (refractory cachexia)” と進行すると, 栄養補給を行っても有効に同化することができず, 栄養不良は不可逆的な状態になる. そのため, 悪液質のステージを評価し, 適切な栄養管理を行うことが重要となる.
著者
網谷 東方 網谷 真理恵 浅川 明弘 乾 明夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1013-1022, 2016

<p>悪液質がもたらす栄養不良には, 食欲不振が大きく影響している. さらに, 炎症性サイトカインに誘発される全身の炎症反応による代謝異常のため, 骨格筋分解の亢進, インスリン抵抗性, 脂質分解の亢進などの同化障害と異化亢進された状態にある. この代謝障害が高度になり, 悪液質のステージが, "前悪液質 (precachexia)", "悪液質 (cachexia)", "不応性悪液質 (refractory cachexia)" と進行すると, 栄養補給を行っても有効に同化することができず, 栄養不良は不可逆的な状態になる. そのため, 悪液質のステージを評価し, 適切な栄養管理を行うことが重要となる.</p>
著者
浅川 明弘 乾 明夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.11-16, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

機能性消化管障害は,遺伝・環境を含んだ生育歴を背景に,心理社会的ストレスが心身相関,特に脳腸相関における神経内分泌系の異常などをもたらし,閾値を越えた時に,消化管運動機能異常,内臓知覚過敏などが顕在化して発症する.診療においては,胃腸症状に焦点をあてた対症療法のみならず,原因となる要因,病態の上流に位置する心理社会的背景などを把握した根治治療,全人医療,個別化医療が要求されている.
著者
乾 明夫 浅川 明弘 須藤 信行 佐久間 英輔 井上 浩一
出版者
鹿児島大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

平成28年度に続き、こころの発達・意欲を阻む原因を解明するため、社会-脳内-体内環境相関の全人的ループのバランス破綻のメカニズムの検討を行った。鹿児島大学においては、認知機能の低下におけるfractalkine-CX3CR1シグナルの関与を明らかにする目的で、糖尿病モデルマウスの学習記憶障害について検討した。その結果、血中corticosteroneレベルの増加およびinsulin-like growth factor-1(IGF-1)の減少、さらに海馬のfractalkineおよびCX3CR1 mRNA発現の減少が認められた。正常マウスへのCX3CR1アンタゴニストの投与にて学習記憶障害が誘発されるとともに、dexamethasoneの投与にて、血中IGF-1の減少、海馬のfractalkineおよびCX3CR1 mRNA発現の減少が認められた。九州大学においては、神経性やせ症患者の腸内細菌叢を無菌マウスへ移植して作製した人工菌叢マウス(ANマウス)の特徴について、健常女性の腸内細菌叢を無菌マウスへ移植したコントロール群(HCマウス)と比較、検討した。まずANマウスの腸内細菌叢は移植したドナー患者の腸内細菌叢を反映した構成となっていた。ANマウスではHCマウスと比較し、エサの摂取量に対する体重増加率(栄養効率)が不良であった。またANマウスでは不安と関連した行動に異常が認められた。名古屋市立大学においては、自閉症、ひきこもりなどの動機付けに掛かる心身発達の障害病態脳にて、神経免疫系の病的な活性化が惹起される神経病理を紐解くことをねらいとし、自閉症などの病態モデル動物で脳内ミクログリアの毒性転化を来すニューロン・グリア相関破綻の分子基盤を解析した。その結果、母仔分離による自閉症病態モデルラットで、自閉症様行動の発現期(およそ2ヶ月齢)に脳内ミクログリアが活性化すること、また、それに先んじ、ニューロン由来の可溶性fractalkineの産生が著増することが確認された。
著者
乾 明夫 浅川 明弘
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 = Japanese journal of psychosomatic medicine (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.29-38, 2011-01-01
参考文献数
32
被引用文献数
1

脳・消化管ペプチドは,脳と消化管の双方に存在するペプチドであり,消化管機能の調節のみならず,食欲・エネルギー代謝や情動,学習・記憶に深くかかわると考えられている.食欲・体重調節に関しては,1994年のレプチンの発見以来,その概要が明らかになり,脳・消化管ペプチドはレプチンの下流に存在し,体脂肪量の過不足に応答する食欲・体重調節機構の根幹を担うことが証明された.脳・消化管ペプチドのヒト行動に及ぼす役割に関しては,動物での成績に加え,血中・脳脊髄液中ペプチド分泌動態やペプチド投与効果の観察など,ごく限られた知見しかない現状にあった.しかし,近年の遺伝子解析技術の進歩や,ペプチドからの創薬,脳画像解析技術の進歩などから,脳・消化管ペプチドのヒト行動に及ぼす役割が明らかになりつつある.脳・消化管ペプチドがどこまで,われわれの行動を規定しているかは大問題であるが,そのアプローチ法と問題点について述べた.