著者
奈尾 雅浩
出版者
愛媛県農業試験場
雑誌
愛媛県農業試験場研究報告 (ISSN:03887782)
巻号頁・発行日
no.39, pp.50-59, 2005-12
被引用文献数
1

愛媛県におけるイチゴ炭疽病の発生は2001年以降、増加傾向にある。このため、2003年に愛媛県内のイチゴ産地よりイチゴ炭疽病菌を150菌株採集し、寒天希釈法によりベノミル(ベンレート水和剤)、ジエトフェンカルブ(ゲッター水和剤の一成分)、ビテルタノール(バイコラール水和剤)における薬剤感受性を明らかにした。常用濃度を超えるMIC値(ppm)を示した菌株数はベノミル(1000ppm)が131菌株、ジエトフェンカルブ(125ppm)が20菌株、ビテルタノール(100ppm)が146菌株であった。また、採集菌株の中から30菌株を供試して薬剤の治療効果、予防効果を把握した。供試薬剤はアントラコール顆粒水和剤、デランフロアブル、ベルクート水和剤、バイコラール水和剤、ゲッター水和剤、アミスター20フロアブル、キノンドーフロアブル、ベンレート水和剤とした。その結果、ゲッター水和剤に治療効果が、アントラコール顆粒水和剤、アミスター20フロアブル、キノンドーフロアブル等に予防効果が認められた。1991年に県内で採集したイチゴ炭疽病菌(AN-30株)によるイチゴヘの接種試験においてベンレート水和剤が高い防除効果を示したことに比べ、2003年採集菌による接種試験では、ベンレート水和剤の防除効果は明らかに劣っていた。
著者
大森 誉紀
出版者
愛媛県農業試験場
雑誌
愛媛県農業試験場研究報告 (ISSN:03887782)
巻号頁・発行日
no.41, pp.51-55, 2008-03

愛媛県における農耕地土壌調査のあゆみと今後の課題。日本で土壌調査が始められたのは明治10年代で、農商務省が明治15年にドイツ人の農林地質学者マックス・フェスカを招聘し、その指導で旧国別の土性調査を開始した。最初に作成されたのが「大日本甲斐国土性図」(明治17年)で、最後に完成したのが「陸奥国土性図」(昭和23年)である。愛媛県の土性図は大正3年(1914年)に「大日本帝國伊予國土性圖」が刊行された。発行は農商務省農事試験場で、英文タイトルはAgronomic Map of IYO Provinceである。重信川を境に東北部と西南部の二部構成となっており、いずれも縮尺は百万分の一で、掛け軸に表装され、農業試験場本館展示室に保管されている。農業試験場では、大正13年(1923年)から「施肥標準調査」が開始された。これは、土性の種類ごとに作物を栽培し、肥料の種類や施用量、好適施用時期などを明らかにすることが目的であった。昭和6年に公表された報告書には、「結晶片岩風化土壌ハ腐植質ニ富ム生産力割合ニ強ク吸収力モ相当大ナリ」など、土壌の肥沃度についての記述がある。