著者
大森 誉紀
出版者
愛媛県農業試験場
雑誌
愛媛県農業試験場研究報告 (ISSN:03887782)
巻号頁・発行日
no.41, pp.51-55, 2008-03

愛媛県における農耕地土壌調査のあゆみと今後の課題。日本で土壌調査が始められたのは明治10年代で、農商務省が明治15年にドイツ人の農林地質学者マックス・フェスカを招聘し、その指導で旧国別の土性調査を開始した。最初に作成されたのが「大日本甲斐国土性図」(明治17年)で、最後に完成したのが「陸奥国土性図」(昭和23年)である。愛媛県の土性図は大正3年(1914年)に「大日本帝國伊予國土性圖」が刊行された。発行は農商務省農事試験場で、英文タイトルはAgronomic Map of IYO Provinceである。重信川を境に東北部と西南部の二部構成となっており、いずれも縮尺は百万分の一で、掛け軸に表装され、農業試験場本館展示室に保管されている。農業試験場では、大正13年(1923年)から「施肥標準調査」が開始された。これは、土性の種類ごとに作物を栽培し、肥料の種類や施用量、好適施用時期などを明らかにすることが目的であった。昭和6年に公表された報告書には、「結晶片岩風化土壌ハ腐植質ニ富ム生産力割合ニ強ク吸収力モ相当大ナリ」など、土壌の肥沃度についての記述がある。
著者
大森 誉紀
出版者
愛媛県農林水産研究所
巻号頁・発行日
no.7, pp.42-52, 2015 (Released:2015-06-08)

耕地内の自然循環機能を活かして,除草剤や殺虫剤を使用しない水稲栽培技術の確立をめざし,耕地生態系農法確立試験ならびに有機栽培技術確立実証試験として,無農薬栽培を28年間実施した。試験開始初期は雑草害や病虫害の発生がなく,慣行区並みの収量が得られた。試験開始6年目から雑草害が顕著となり,収量が低下した。耕地生態系は不安定な系であるため外部からの影響を受けやすいが,雑草の発生量を人為的に抑制することで水稲収量を慣行並みとすることが可能であった。次いでイネクロカメムシ等害虫が多発した。谷あいの狭小な試験水田では,周辺の自然生態系から害虫が侵入しやすく,農薬不使用では害虫密度を被害許容水準以下に管理できず,収量低下の要因となった。
著者
大森 誉紀 横田 仁子 武智 和彦
出版者
愛媛県農林水産研究所
雑誌
愛媛県農林水産研究所企画環境部・農業研究部研究報告 (ISSN:18837395)
巻号頁・発行日
no.4, pp.37-46, 2012-03

県内の露地野菜の中で,有機栽培等特別栽培農産物として栽培面積が多い10品目について,病害虫の発生状況に応じて有機JASで使用が認められた資材等を活用した有機栽培の実証試験を行った。春どりキャベツではBT剤や抵抗性品種を用い,夏秋キュウリには除虫菊剤と銅剤,スイカでは耐病接木苗,スイートコーンにはBT剤,春どりブロッコリーでは防虫ネットをそれぞれ用いることで,いずれの品目も病害虫の発生の少ない作期・作型で栽培すると,病害虫の被害が少なくなり,有機栽培に取り組みやすくなる。排水不良の圃場や連作圃場では,有機栽培に取り組む以前にその改善が必要である。除草対策ではマルチ栽培が有効で,畝間除草には中耕や防草シート等の利用が効果的である,鶏糞を使用する場合は,肥効率を考慮して施用するのが良い。