著者
村上 彬
出版者
放射化分析研究会
雑誌
放射化分析
巻号頁・発行日
no.30, 2014-12

植物中に含まれるリンの放射化分析法による定量を目的として、京都大学研究用原子炉に設置されている圧気輸送管と黒鉛設備圧気輸送管を用いて照射実験を行った。植物試料とは別にリン及びアルミニウム標準試料を照射し、γ線測定を行うことにより各照射設備における1mgの試料の照射により生成する^<28>Alから放出されるγ線の計数率を調べた。得られた重量当たりの計数率を用いることで、1mgの植物試料中に含まれる0.037mg〜0.15mgのリンを数%〜20%未満の誤差で定量することができた。また、高い精度でリンを定量するための条件について考察を行った。
著者
中島 健
出版者
放射化分析研究会
雑誌
放射化分析
巻号頁・発行日
no.24, pp.12-16, 2009-06

世界各国の研究用原子炉(研究炉)では、従来は濃縮度90%以上の高濃縮ウランを使用していたが、この高濃縮ウランは核兵器に直接転用可能であるため、米国とIAEA(国際原子力機関)の主導により、濃縮度20%未満の低濃縮ウランに転換するプログラム(RERTR: Reduced Enrichment for Research and Test Reactor)が進められている。多くの研究炉では、燃料の濃縮度を低くした代わりに燃料1体当たりのウラン量(ウラン密度)を増やすことによって、原子炉の特性がほとんど変わらないように工夫している。ウラン密度を増加させるには、従来のウラン-アルミニウム合金では困難なため、ウラン-シリサイド合金をアルミニウム中に分散させた燃料(シリサイド燃料)が広く採用されている。京都大学研究用原子炉KURでも、これまでは濃縮度93%の高濃縮ウランを使用していたが、2006年2月の運転を持ってその使用を終了し、燃料低濃縮化のための作業を開始した。今後のKURでは、濃縮度を93%から約20%へと低減し、ウラン密度を約0.6g/cm^3から3.2g/cm^3へと増加させた低濃縮ウラン燃料(シリサイド燃料)を使用することとなる。この低濃縮化のための準備作業として、原子炉等規制法に基づく原子炉設置承認申請書の変更(いわゆる安全審査)をこれまでに終了し、現在は低濃縮ウラン燃料の製造及び関連する検査、休止中の原子炉の健全性確認(総点検)を順次行っているところである。健全性確認では、運転再開後の安定した使用が可能となるように、運転中は観察が行えない箇所も含めて大掛かりな点検及び必要な機器設備の改修を行っている。また、低濃縮ウラン燃料を装荷した炉心の核特性解析を行い、運転及び実験における濃縮度低減の影響評価を行っている。なお、使用済みの高濃縮ウラン燃料については、既に全数を米国に返送済みである。低濃縮ウラン燃料の製造はフランスの燃料メーカーにて行っており、2009年5月に当実験所に到着する予定である。その後各種の検査等を行い、これらに無事合格した後に、KURは運転を再開することなる。ただし、燃料製造に係るコストの問題から、今回製造する燃料は30体のみであり、従前のような定格出力5MWの運転を定常的に行うと短期間で全燃料を消費してしまう。このため、運転再開後は出力1MWを標準とした運転を計画しているところである。本報告では、燃料低濃縮化を含めたKUR停止期間中に実施してきた、あるいは実施中の、各種の作業及び新炉心の核特性予測評価等、運転再開に向けての準備状況と今後の予定について紹介する。
著者
伊藤 泰男
出版者
放射化分析研究会
雑誌
放射化分析
巻号頁・発行日
no.13, pp.70-85, 2002-02

核分裂とその制御機構を学習・研究する道具としての研究炉の役割は初期に比べれば相対的に小さくなっているものの、原子力の恩恵が社会に広く行き渡り、その持続可能性を確保することが新たな課題となっている現在、研究炉による実体験をもって原子力や放射線を理解することが原子力利用社会を構成する多くの人に必要になっている。さらに、研究炉は理工学研究や産業・民生にも役立っているし、原子力利用の一層の展開のために高度な研究炉開発も必要である。しかしながら、研究炉の維持が多くの困難を抱えている現在、研究炉を望ましい形で保持していくことはほとんど不可能になっている。研究炉の困難の背景には、その維持・管理全てに関わることを設置者の責任とする現在の法体系があるが、使用済み燃料の処理・処分が根幹的な問題として浮上している。使用済み燃料の処理・処分の方策が立てられないと研究炉の存立はあり得ず、研究炉の存立がなければ健全な原子力利用社会は持続しないと云って良い。使用済み燃料の処理・処分は設置者の一存で対応出来ないから、必ず国の指導と支援の元に適切な方策が立てられなければならない。しかしながら、なぜ研究炉がなければならないのかが明らかにされないと、研究炉の諸困難と使用済み燃料の処理・処分問題の解決への訴えも説得力を欠く。本稿で研究炉の意義をやや詳細に記述している意図はここにある。研究炉の位置づけについてのこのような視点から、我々は研究炉問題に全日本的視野で取り組むべく、研究炉間の連絡・提携・支援・利用促進を目的とする「研究炉機構」の必要性を訴えてきた。しかし、その実現には時間を要する。そこで半歩退いて、現有炉の一部特に私大炉が利用出来なくなりつつある一方で、原子力教育を立て直す必要性については社会の合意が成立しやすい状況をにらんで、先ずは研究炉による実体験教育を中心とする「原子力教育センター」を設立することを改めて提案している。