著者
小松 千恵 野村 正子
出版者
学校法人 日本歯科大学東京短期大学
雑誌
日本口腔保健学雑誌 (ISSN:24347108)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.79-84, 2019 (Released:2020-01-24)
参考文献数
15

清涼飲料水の1つであるエナジードリンクは,コンビニエンスストア等で手軽に購入出来るため,若年者の摂取が増えている.エナジードリンク中のカフェインは,疲労感や眠気を消失させる等全身への影響が明らかとなっている.口腔への作用としては,カフェイン含有飲料の過剰摂取を,唾液分泌量低下の原因の1つとする報告もあるが,エナジードリンク飲用により口腔にどのような変化が生じるかについての報告はない.本研究の目的は,エナジードリンク飲用後の唾液量や口臭の変化を明らかにすることである. 対象者は専攻科歯科衛生学専攻に在籍する9名の女子学生で,エナジードリンク飲用後の安静時唾液量,舌の湿潤度,および口臭についての測定を経時的に行った.加えて飲用後の主観的変化を知るために,質問紙調査を行った. その結果,唾液量及び口臭の変化に統計学的な有意差は認められなかったが,「口腔内のべたつき」や「のどが渇く」の自覚症状がみられた.唾液量に変化がなくても,わずかな質の差が,症状を引き起こす可能性を推測した.今後の課題として,唾液に粘稠度を与える糖タンパク量を測定し,口渇感や粘液性唾液との関連を客観的に検討する必要があると考えた. 本研究の結果からエナジードリンクを嗜好する患者さんに対して,その影響について正しい情報を伝達し,歯科保健指導を行うことが重要であると考える.
著者
髙木 美輝 宮崎 晶子
出版者
学校法人 日本歯科大学東京短期大学
雑誌
日本口腔保健学雑誌 (ISSN:24347108)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.72-78, 2019 (Released:2020-01-24)
参考文献数
14

プラーク除去効果に大きな影響を与える因子として,歯ブラシ形態,ブラッシング圧,ブラッシング方法などが考えられる.本研究では刷毛部形態の異なった歯ブラシ,ブラッシング圧およびブラッシング方法の条件を変化させ,プラーク除去率について比較検討を行った.歯ブラシ形態は平型,ドーム型,山切り型の3種類とし,下顎左側第一大臼歯に人工プラークを塗布し,実験を行った.刷掃試験機を用い,スクラビング法とバス法で20 mmのストローク,150 gf,200 gf,250 gfのブラッシング圧で5ストロークの清掃を行い,プラーク除去率を求めた.スクラビング法では150 gf,200 gfのブラッシング圧において山切り型歯ブラシが他の歯ブラシと比較してプラーク除去率が高かった.平型歯ブラシは,ブラッシング圧を高くするほど刷毛が均等に広がり,歯面との接触面積が大きくなりプラーク除去率が高くなった.バス法ではブラッシング圧を200 gf,250 gfにしたとき山切り型歯ブラシが最もプラーク除去率が高かった.低いブラッシング圧では山切り型の毛束が広がらず刷毛と歯面の接触面積が小さくなりプラーク除去率が低くなったと考える.以上のことから山切り型がプラーク除去には有効であると考える.しかし山切り型では,ブラッシング方法やブラッシング圧によってはプラーク除去率が大きく影響を受けるため,指導の際は細かな指導が必要であると考える.
著者
桑田 千尋 佐藤 勉 池田 利恵
出版者
学校法人 日本歯科大学東京短期大学
雑誌
日本口腔保健学雑誌 (ISSN:24347108)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-32, 2019 (Released:2020-01-24)
参考文献数
10

近年,健康寿命を延伸させることの重要性が大きく叫ばれ,国民の健康に対する意識が一段と高まってきている.健康を保持・増進させるためには,規則正しい食生活習慣を身に付けることが極めて重要であると考える.発酵食品は,比較的古くから健康によいと考えられている.そのなかで,乳酸菌は発酵食品に利用されている代表的な細菌であり,免疫賦活化作用,整腸作用およびコレステロール低減作用を有することが知られている.歯科領域では,う蝕や歯周病細菌に対して増殖抑制作用を示すことが報告されており,その効果を利用した様々な乳酸菌配合の口腔ケア製品が開発・市販されている. 本研究の目的は,市販のオーラルケア用乳酸菌含有食品のStreptococcus mutans(S.mutans)とCandida albicans(C.albicans)に対する増殖抑制効果を検証し,口腔ケアツールとしての有用性を検討することである.具体的には,3種類の被験食品を溶解させて被験食品溶解液を作成し,その一定量を添加した培養液中でのS.mutansとC.albicansの増殖能を測定した. その結果,乳酸菌含有食品を掲げて市販されている食品でも,S.mutansやC.albicansの増殖に及ぼす効果については,違いがあることが示された. 今後は,効果の持続時間や口腔内疾患を有する患者を対象とした検討のほか本研究で使用したS.mutansやC.albicans以外にも歯周病菌に対する増殖抑制効果の有無といった検討を行うことも重要である.