著者
加藤 彰 上ノ原 和也 橋本 隆
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.856, 2005-03-24 (Released:2006-01-11)

キノリン酸はニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)生合成系の中間産物である。動物やカビはキノリン酸をL-トリプトファンから合成し、大腸菌などの細菌類ではL-アスパラギン酸から合成する。アラビドプシスはゲノム上に大腸菌型経路のアスパラギン酸酸化酵素(AO)とキノリン酸合成酵素(QS)の予想遺伝子を持ち、動物型経路の遺伝子を持たない。また、アラビドプシスのAOとQS遺伝子はそれぞれの大腸菌欠損株の生育を相補した。従って、アラビドプシスなどの高等植物はキノリン酸を大腸菌と同じ経路で生合成すると考えられる。細胞内のキノリン酸合成の場を明らかにするために、AOとQSのC末端にそれぞれGFPタグを融合させた酵素をアラビドプシス植物体で発現させてその局在性を調べた。GFP融合酵素を発現させることにより、AOとQSのT-DNA挿入変異株の致死性を相補できた。形質転換株のGFP蛍光は葉緑体に認められたので、キノリン酸の生合成は葉緑体内で進行すると考えられる。
著者
石田 さらみ 湯淺 高志 高橋 陽介
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.032, 2005-03-24 (Released:2006-01-11)

RSGはジベレリン(GA)内生量調節に関与するbZIP型転写活性化因子である。植物体においてその機能を阻害するとGA内生量が著しく低下し矮化形質を示す。これまでの解析により、1)真核生物に広く保存された制御因子、14-3-3タンパク質とリン酸化された114番目のセリン残基(S114)を介して相互作用すること、2)14-3-3タンパク質はRSGと結合するとRSGの核局在を阻害すること、3)RSGは14-3-3により細胞質に静的に拘束されているのではなく、核-細胞質間を高速にシャトルしていること、4)GA欠乏によりRSGは核に輸送され、GA刺激により核外に排出されること、5)この過程にタンパク質の分解は伴わないこと等を明らかとしてきた。GA刺激を受容しても14-3-3タンパク質と結合できない変異体RSGは核外に排出されないことから、GAによるRSGの細胞内局在変化には14-3-3タンパク質が関与することが示唆されている。この結果から、GA刺激によりRSGのS114のリン酸化状態が変化すると推測された。これを実証するため、S114がリン酸化されたRSGを特異的に認識する抗体を作成した。この抗体は、非リン酸化RSGとは交差しない。この抗体を使った解析の結果、GA内生量上昇により核外へ輸送される過程において、RSGのS114のリン酸化が経時的に亢進することが明らかとなった。