著者
梶川 昌孝 加藤 彰 橋本 隆
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.067, 2007 (Released:2007-12-13)

ニコチンはタバコに含まれる塩基性アルカロイドであり、虫害からの化学防御を担う物質である。ニコチンは主に根部においてN-メチルピロリニウムカチオンとニコチン酸関連物質の縮合反応により生合成されると予想されるが、その生合成酵素遺伝子は同定されていない。我々は、この縮合反応を担う候補遺伝子としてイソフラボノイド還元酵素遺伝子ホモログのA622およびベルベリン架橋酵素遺伝子ホモログのNBB1の機能解析を行った。これらの遺伝子発現はニコチン生合成調節因子であるNIC遺伝子座の制御下にあり、かつ根特異的でジャスモン酸応答性を示した。RNAi法によりA622およびNBB1遺伝子の発現を抑制した毛状根、BY-2細胞においてはニコチンアルカロイド量が有意に減少した。BY-2細胞においてA622-GFPおよびNBB1-GFP融合タンパク質を発現させたところ、それぞれプラスチドおよび液胞に局在することがわかった。この結果から、ニコチン生合成はこれら2種のオルガネラで段階的に行われていることが示唆された。
著者
今元 泰
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.S055, 2007 (Released:2007-12-13)

紅色光合成細菌の光センサー蛋白質であるPhotoactive yellow protein(PYP)は、代表的なPASドメイン蛋白質である。PYPは125アミノ酸残基からなる小さな水溶性蛋白質であるため、PASドメインが単独で存在し、機能していると考えられている。また、高分解能で高次構造が解明されているため、特に反応メカニズムを詳細に解明するためのモデル蛋白質として注目されている。PYPの発色団は、システイン残基にチオエステル結合したp-クマル酸(4-ヒドロキシケイ皮酸)で、吸収極大波長は446nmにある。暗状態での発色団は脱プロトン化したトランス型であるが、光を吸収するとシス型に異性化する。その後、吸収スペクトルの異なる反応中間体(L、M、M')を経てもとの暗状態に戻るという光反応サイクルを持っている。この過程で、発色団が静電的に中性となり、蛋白質部分に大きな構造変化を起こして紫外部に吸収極大が移動した中間体であるM'が、活性中間体であると考えられている。最近の研究から、これらの構造変化は、発色団を中心とした水素結合ネットワークの変化や、CH/π、CH/Oのような「弱い」相互作用の変化によって起こることがわかってきた。シンポジウムでは、PYPの光反応にサイクルに関する最近の知見を紹介し、LOVドメイン光受容蛋白質との類似点について議論したい。
著者
高梨 秀樹 有村 慎一 堤 伸浩
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.749, 2007 (Released:2007-12-13)

高等植物のミトコンドリアゲノムはサイズが大きく、またその内部の多数のリピート配列間での組み換えによって、様々なサイズの環状構造DNA分子が生じると考えられている。しかしこれらのDNA分子種の構造については、環状構造の他に線状、分枝状といった多様な様式で存在しているという報告もある。また塩基配列決定から予想される分子種が本当に実在するのかどうか、どのような分子種がどのような比で存在するのかなどはいまだ詳細が不明であり、高等植物ミトコンドリアゲノムの真の構造は明らかになっていないといえる。 本研究では、シロイヌナズナミトコンドリアゲノムを構成するDNA分子種の構造・サイズに焦点を当て解析を行った。シロイヌナズナ植物体からPercoll密度勾配遠心法を用いてミトコンドリアを精製し、スライドガラス上でミトコンドリアを破裂させ内部に含まれるDNAを展開させた後、YOYO-1によってDNAを染色した。サイズ既知の複数のBACクローンを同様にYOYO-1で染色しkbp-μm間の検量線を作成し、これを用いておおよそのミトコンドリアDNAのサイズ(kbp)を推定した。その結果、シロイヌナズナミトコンドリアゲノム中には様々なサイズの環状・線状DNAが観察され、興味深いことにシロイヌナズナミトコンドリアゲノム(367kbp)の二倍近いサイズの環状DNAも存在することがわかった。