著者
下川 瑞貴 江頭 孝幸 野口 大介
出版者
日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 = JSSE Research Report (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.127-130, 2023-02-23

「炭酸アンモニウム」は不安定な物質であり,市販品は炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムの混合物とされる.炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムには結晶構造が知られており,最近では炭酸アンモニウムについても一水和物の結晶構造が報告された.こうした結晶構造データを効果的に用いれば,高校化学の無機物質分野におけるより魅力的な授業を展開できるかもしれない.すなわち,簡易型アンモニアソーダ法の生徒実験を湯煎および氷冷による二通りで実施すれば,高温と低温で生じる違いを事前に予想させつつ,観察に目的意識を持たせることができる.そして反応温度により生成物が異なることに気づかせ,思考を深めさせることも期待できる.結晶構造を立体的に表示すれば,視覚的理解に基づくさらに発展的な学習も可能だろう.
著者
野口 大介
出版者
日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 = JSSE Research Report (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.47-52, 2019-12-21

Copper dendrites exposed to a magnetic field of rare earth magnets in an electrolyzing aqueous solution of CuSO4 resulted in two things. Firstly, a precipitation around the cathode with swirling, and secondly, a growth while spinning around the cathode during the electrolyzing process if a vibration by hand was gently added to the cathode. If these phenomena become inquiring learning materials, it seems to be of significant value in secondary educational practice. In this report, it is shown that the different concentrations of solution change the form of copper dendrites. The lower one needs waiting for enough changing the form, on the other hand, the higher one causes collapse with too strong flow by the Lorentz force acting ions in the solution.
著者
野口 大介
出版者
日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 = JSSE Research Report (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.23-28, 2020-06-20

高等学校化学においてよく取り上げられるナトリウムフェノキシド(NaOPh)の結晶構造データを取得し,その単分子および結晶中三次元構造を調査した。NaOPhのみからなる純結晶はNa2O2四角形単位を含む(Na2O2)nラダー型ポリマー構造を有しており,ユニークな三次元構造を形成している.一方,水和物結晶であるNaOPh・H2Oでは対イオンであるナトリウムイオンとともに水和されている様子が,さらにNaOPh・3H2Oでは結晶水によりナトリウムイオン対が解離して水に溶解したかのような状態が,それぞれ確認できる.その他の溶媒和結晶の構造からも,溶媒和に伴う(Na2O2)n構造の解離の様子が見られた.これら一連の流れを授業で効果的に展開することで,化学物質の構造や溶解現象を分子間相互作用と結び付けて生徒に理解させることが期待できる.