- 著者
-
加瀬沢 信彦
鈴木 啓吾
- 出版者
- 一般社団法人 日本総合健診医学会
- 雑誌
- 日本自動化健診学会々誌 (ISSN:0386135X)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.3, pp.125-135, 1981-12-20 (Released:2010-09-09)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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成人健診における実用的な肥満判別法について検討を行ない, 次の知見が得られた。1.身長別に標準体重を推定する従来の各種方法 (算出式や表) は, 性, 年齢, 異常データの混入状態など標本集団の不均質に基づく要因によって常に一定の指標が得られないという欠点があり, 肥満指数として普遍妥当性に乏しい。2.三種の体格指数 (W/H比, W/H2, W/H3) を健常成人データを用いてその実用性を比較すると, W/H比が体重との相関が最も強く, 年齢や身長の影響を受けにくく, かつ算出が容易であるという点において, 肥満度指標として最適であった。3.W/H比の健常成人のヒストグラムは男女とも正規分布とみなし得るので, パラメトリックな統計処理が可能である。すなわち, 著者らは平均値を中心として, 1S.D.間隔ごとにW/H値を区分し, 7段階の肥痩判定を行う方法を考案したが, これは統計学上, 利便を有するものである。4.W/H比の基準分布は“健常者集団”から容易に算出される。著者らは最近5年間のデータから, 20~75歳の人間ドック健常者を対象として男子33~41, 女子30~38のW/H基準値 (平均値土1S.D.) を得たが, 実用的な基準値の設定にあたっては, 性, 年齢, 地域, 時代, 種族等を考慮して決められることが望ましい。その場合, W/H値自体は共通の指標として相互比較が可能である。5.W/H判定法に皮下脂肪厚測定を組合せることにより, 成人肥満のスクリーニングとしての信頼性がさらに向上する可能性が示唆された。(本論文の要旨の一部は, 第8回および第9回日本自動化健診学会学術大会, 並びにExcerpta Medica-ICS 539 (1981) に報告した。)