著者
大重 育美 衛藤 泰秀 小川 紀子 苑田 裕樹 山本 孝治 西村 和美 姫野 稔子 高橋 清美 田村 やよひ
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing = 日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing (ISSN:21868042)
巻号頁・発行日
no.18, pp.23-30, 2020-03-31

われわれは平成28年度の学長指定研究開始後より、福祉避難所としての仕組みを整えるための活動を行ってきた。平成29 年度には、熊本地震の際に福祉避難所としての運営を行った施設責任者を対象に聞き取り調査を行い、公共施設での福祉避難所の課題を明らかにした。今年度は、日本赤十字九州国際看護大学(以下、本学とする)が福祉避難所として機能するためにどの場所が適切なのか、実際に収容できるのかの実証的な調査が必要であった。そこで、本研究は災害を想定した福祉避難所としての運営に向けた課題を環境の変化と人体への影響という視点から明らかにすることを目的とした。方法は、福祉避難所として想定している本学敷地内のオーヴァルホール、体育館、実習室の外気温、室内温、湿度の経時的な変化を計測し、20歳代から70歳代までの各年代の参加者の自覚的疲労度を主観的評価と体温、血圧、脈拍を経時的に測定した。その結果、室内温は、時間の推移に伴い徐々に下降傾向で、オーヴァルホールと実習室は温度の推移がほぼ同じで2時以降やや下降気味であった。外気温は、オーヴァルホールと体育館は同じ推移であったが、実習室の外気温は棟内であり、気温の低下の影響は少なかった。主観的な評価項目では、「ねむけ感」が時間の推移に伴い高まり、「ぼやけ感」は22時をピークに下降気味となった。したがって、室内温、外気温の変化がほぼ同じだったことから、収容場所は要配慮者の状況によっては、オーヴァルホール、体育館、実習室の利用が可能であることが示唆された。課題は、睡眠環境の整備として寝具の工夫が必要であることが明らかとなった。報告 = report
著者
守山 正樹 鈴木 清史
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing = 日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing (ISSN:21868042)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-12, 2020-03-31

看護師にとって手の働きは重要であり、触れる技術としてのタッチは看護の基本技術と位置付けられる。しかし看護の初学者に対し、技術としてのタッチの教育を急ぐ前に、タッチの基礎となる「手で対象に触れ感じ考えることの意味」をどのように教育したらよいだろうか。国内外の文献を検索したが、適切な先行研究が見当たらなかった。そこで看護大学の初年次教育用に新プログラムを開発した。 開発に当たっては、筆者が1990 年代から医学生を対象に行ってきた視覚障害体験実習の1プログラム「身の回りの物体に触れて考える」を出発点とした。少人数の設定では、学生は様々な物体(複雑な日用品から人間の手肌まで)に触れて考えることができる。しかしこの設定を大教室に適用するのは難しい。大教室で実行するためには工夫が必要である。飽きることなく触れ続けられ、様々なことを考えられる物体は何だろうか?学生がその指先から"人間性"や"看護の概念"に至るまで、思考を拡げることは可能だろうか? 試行錯誤の結果、気泡緩衝材(通称プチプチ)に注目した。プチプチは独特なアフォーダンスを持っている。通常はプチプチを渡すと学生はすぐにそれを潰し始める。しかし「なぜ潰すのか?それを命と考えても潰せるか?」などの問いを投げかけると、学生は触れることの意味を考え始める。プチプチにナラティブな問いかけを組み合わせ、新教育プログラムとした。2019 年6 月、学生120 名に対して新プログラムを実施した。学生はプチプチを教材として受入れ、"触れることの意味"から"看護と人間性"に至るまで、自律的に思考を発展させたことが観察された。報告 = report