著者
山田 昇司
雑誌
朝日大学経営論集 = Asahi Business Review (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.9-30, 2018-03-31

本稿は第31回JACET(大学英語教育学会)中部支部大会(2015/6/20南山大学・名古屋キャンパス)で行なった実践報告「「豊かなコミュニケーション力」として活用できる基礎力とは何か―英語の幹「リズム」「語順」を学ぶ授業を!」が元になっている。今回、『朝日大学経営論集第32巻』に掲載するにあたって若干の字句の修正と加筆をおこない、さらに末尾にその後の実践をふまえた「追記」を補筆したが、それにともなってタイトルを表記のものに改めた。さて本稿では、会話力を身につけるには「会話」を重視して教えるという言説に対して、「読み」「書き」の土台をしっかりと築くことこそが肝要であるという見地に立った授業実践の一例を示した。まず、題材に太宰治「走れメロス」の英訳を採用した経緯を述べ、次にそれをどのように「音読」と「英作文」の教材に作り変えたか、さらにはどのように授業を構成し評価の仕組みを考えていったのかについて論じた。筆者が教える学習者には英語に対して苦手意識を持っている者が多いが、そのような学生であっても彼らの知的レベルにふさわしい内容の教材を選び、英語の幹である「リズム」や「語順」に絞り込んで教えていくと、学生は次第に学習意欲を回復していく。その様子を学生の授業レポートのいくつかを示して紹介した。最後に「丸暗記ゼロ」の英語教育がいかに学習者の人間的成長に役立っているかについても私見を述べた。