著者
応 傑
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.9-17, 2006-09

本稿は「無頼派」作家坂口安吾の代表作である「桜の森の満開の下」の考察を通して、安吾文学の主題のひとつ-本質的な意味において、人間は救いがないこと-を指摘したい。ただ、人間の本質的な悲哀を指摘することこそが安吾文学の価値だと思うことは明らかに誤解だ。安吾文学の価値は、人間の本質的悲哀を認識した後の悟りにある。人間の悲哀を認識してこそ、幻的な道徳、価値を、「ファルス」の態度で肯定し、否定することができ、真の意味で人間に愛を持てる。そういう点で安吾文学は、既存道徳に大きな衝撃を与えると同時に、慈悲さも感じさせるものだといえよう。
著者
山田 昇司
雑誌
朝日大学経営論集 = Asahi Business Review (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.9-30, 2018-03-31

本稿は第31回JACET(大学英語教育学会)中部支部大会(2015/6/20南山大学・名古屋キャンパス)で行なった実践報告「「豊かなコミュニケーション力」として活用できる基礎力とは何か―英語の幹「リズム」「語順」を学ぶ授業を!」が元になっている。今回、『朝日大学経営論集第32巻』に掲載するにあたって若干の字句の修正と加筆をおこない、さらに末尾にその後の実践をふまえた「追記」を補筆したが、それにともなってタイトルを表記のものに改めた。さて本稿では、会話力を身につけるには「会話」を重視して教えるという言説に対して、「読み」「書き」の土台をしっかりと築くことこそが肝要であるという見地に立った授業実践の一例を示した。まず、題材に太宰治「走れメロス」の英訳を採用した経緯を述べ、次にそれをどのように「音読」と「英作文」の教材に作り変えたか、さらにはどのように授業を構成し評価の仕組みを考えていったのかについて論じた。筆者が教える学習者には英語に対して苦手意識を持っている者が多いが、そのような学生であっても彼らの知的レベルにふさわしい内容の教材を選び、英語の幹である「リズム」や「語順」に絞り込んで教えていくと、学生は次第に学習意欲を回復していく。その様子を学生の授業レポートのいくつかを示して紹介した。最後に「丸暗記ゼロ」の英語教育がいかに学習者の人間的成長に役立っているかについても私見を述べた。
著者
米田 真理
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.11-18, 2008-03

従来、能における家元制度の成立は観世(かんぜ)流の十五世大夫(家元)である観世元章(もとあきら)[1722〜74]が行った改革の事例をもとに説明されてきた。本稿ではその比較対象となり得る事例として、喜多(きた)流の九世大夫である喜多七大夫古能(しちだゆうひさよし)[1742〜1829]を取り上げ、その著作活動を軸に、以下の問題について考察した。まず、家元を継承して最初に取りかかったのは公式謡本(うたいぼん)の刊行だったが、これは、当時すでに観世流によって完成されていた、謡の教授システムの整備に追いつこうとする動きであった。また、同時に始められた喜多流伝書の再編も、観世流における伝書需要の実態を受けたものであった。ただ、絶大な権威を父から譲り受けた元章とは異なり、古能の場合、先代までの養子相続による芸系の乱れから、流儀内の基盤の整備はもっと差し迫っていた。家元継承時の古能の危機意識は、謡本刊行直前の喜多流の状況や、古能自身の回想から知られる。そこで古能は、喜多流の統一した演じ方を定めるため、宗家や別家、弟子家の伝書を集めて内容を比較するという方法をとったのだった。古能によって再編された各種伝書は、流儀の弟子に対する指導用書の役割を帯びるようになった。特に、大名など高級武家層への伝書相伝の状況からは、裕福な素人弟子を対象として、伝書が経済的安定に寄与していたことが知られる。ただ、こうした相伝や能面の仲介など金銭の授受を伴う活動は、むしろ古能の隠居後、すなわち「家元」でなくなった後に盛んに見られることから、家元制度の経済面に関するさらなる分析が必要であることを示唆した。
著者
横井 祐一
出版者
朝日大学経営学会
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-18, 2021-03

鉄道は日本の交通の重要な役割を担っており、その安全性は強く要請されている。特に近年は気候変動の影響もあり自然災害が多発しており、この自然災害に関連する鉄道事故も少なくない。事故発生原因を深く探求し、それを事故予防につなげるためには適切な事故調査が不可欠であるが、正確な証拠・情報収集だけでなく関連要因の分析の深さが事故防止に期待されるところである。本研究では、自然災害に関連して発生したと考えられる鉄道事故の中で、特に注目すべき関連性を持つと考えられる3件の事故を挙げて、事故の発生要因を分析するとともに事故調査の課題について検証を行った。いずれの事故調査報告書も原因分析は十分とは言えないものであり、さらに3件の事故の原因の関連性を指摘し、その関連性に気づくことが困難となっている事故調査報告書の公表方法についても課題があることを指摘した。
著者
山田 昇司
出版者
朝日大学経営学会
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.31-58, 2018-03

チャールズ・チャップリンが作成した映画『独裁者』(1940)には最後に6分ほどの長さの演説がある。そのすばらしい内容と映像が使えるという利点に惹かれて、これまで多くの英語教師がこの「結びの演説」を教材として採用してきた。ただその実践者はこの演説を音声指導においては「暗唱」用として使うことが多かった。それに対して寺島(1997a)は「リズムよみ」→「表現よみ」→「スピーチ(暗唱)」というタスク配列を提起した。というのは、学習者に最初から暗唱を要求すると、それを覚えることにエネルギーを費やすことになり、仮にそれが出来たとしても、演説の中の「反復」や「対比」が生み出す響きのよい音韻性や演説全体が作り出す「緩→急→緩」といったリズムの心地よさに気づかないからかなめだ。いやそれどころか、肝心要の、英音の基本構造「リズムの等時性」を学ぶことすらできなくなる恐れがある。寺島美(1987)や寺島(1997a)には上記配列の「表現よみ」までで止めて成功した実践が記録されているが、筆者はこれまで全体を「表現よみ」させる追試を行ったことは一度もなかった。本論はその実践をはじめて行うに先立って筆者がどのようにこの教材を準備して授業計画を組み立てていったのかをまとめたものである。まず始めに以前に用いた読解プリントを見直す中で、語義ヒントの与え方や、英文構造を視角化する記号のひとつである四角(関係詞や接続詞)のつけ方などについて考察した。次に寺島(1996)で示されている「リズム記号」を生の音声と比較して検証した際に気づいた点について私見を述べた。本論の後半では「表現よみ」を成功させるための実践的手順を先述の2つの文献やその追試を行った新見(2013)を引用しながら検討した。最後に、どうして今回、筆者がこの演説を教材として取り上げることになったのかについてその経緯を記述した。チャップリンにこの映画のつくらせる動機となったのは欧州でのアドルフ・ヒトラーの抬頭であったが、その思想的背景である「優生思想」についても若干の歴史的な考察を行なった。なお本論にはこの実践を終えてから総括した続編、山田(2018)がある。併せて読んでいただきご意見、ご批判をいただけるとありがたい。
著者
稲吉 啓
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.57-61, 2006-09

第78回日本品質管理学会中部支部研究発表会が、日本品質管理学会中部支部主催・朝日大学経営学会後援により、2005年9月7日(水)に朝日大学で行われた。研究発表は2会場(5号館1階512、513)に別れ、計16件の研究発表が行われ、白熱した質疑応答が繰り広げられた。
著者
國澤 英雄
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.55-56, 2006-09

日本生産管理学会の第44回全国大会が、日本生産管理学会主催・朝日大学経営学会後援で、2005年9月3日(土)、4日(日)に愛知県中小企業センター(名古屋市中村区名駅)で行われた。統一テーマとして「IT活用型"ものづくり"と生産技術」が掲げられ、基調講演、特別講演、招待講演、研究発表(62件)、支部研究報告(2件)などと時宜にかなったテーマのもと、充実した内容で盛大に行われた。
著者
吉村 侑久代
出版者
朝日大学
雑誌
朝日大学経営論集 (ISSN:09133712)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.61-62, 2008-03

第6回日本英詩協会2006年度総会及び研究発表会が、2006年10月13日(金曜日)、午後1時より5時30分まで、朝日大学10周年記念館中2階会議室で開催された。参加者は学会会長・大日向幻(関西学院大学)、事務局長・大池満(園田学園大学)、会計・吉村侑久代(朝日大学)をはじめその他会員20人と学生10名、一般参加者5名であった。会員は主に大学の外国語学部、英米文学部に所属する教員で、北海道、東京、栃木、神戸、大阪、広島から参加した。大会テーマである「アジアから発信する詩心」のもと三部構成で行われ、一部に基調講演と英詩朗読、二部に研究発表と英詩朗読、三部に英詩朗読、小休止のあと本部会計報告と次年度開催地の決定などが討議され、充実した内容で終えることができた。総会、講演、研究会の発表は英語のみで行われた。