著者
村上 元 森元 隆文 西山 薫 池田 望
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌保健科学雑誌 = Sapporo Medical University Sapporo Journal of Health Sciences
巻号頁・発行日
no.7, pp.25-30, 2018-03

妄想的観念はその主題に基づいて分けることができる.負の感情価の主題を持つ観念は被害妄想的観念となり,正の感情価の主題を持つ観念は誇大妄想的観念となる.妄想的観念は主題の相違によりその発生メカニズムが異なると想定されている.そこで,本研究では,被害妄想的観念は「疎外」「被害」の主題を持つ観念で,誇大妄想的観念は「被好意」「庇護」「他者操作」「自己肯定」の主題を持つ観念で構成されると想定し,各6つの主題に対する感情と原因帰属の影響を検討した.対象は統合失調症患者48名であり,全ての対象に妄想的観念チェックリスト,原因帰属尺度,気分調査票短縮版による測定を実施した.その結果,正あるいは負の感情価の主題を持つ妄想的観念ごとに抑うつや怒りなど共通する影響要因が存在した一方で,各6つの主題ごとに異なる影響要因も存在した.以上のことから,妄想的観念の主題に応じた介入を展開することが望ましいと言える.