著者
村上 元 森元 隆文 西山 薫 池田 望
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.8, (Released:2018-05-18)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本研究は,被害妄想的観念の頻度,確信度,苦痛度の3側面に対して影響を与える要因を検証することを目的とした。被害妄想的観念への影響要因としては原因帰属,不安,抑うつを想定した。原因帰属は,内在性,安定性,全般性の3次元とし,内在性についてはさらに内的帰属,外的–状況的帰属,外的–人的帰属の3次元に細分化した。研究には統合失調症患者48名が参加した。階層的重回帰分析の結果,被害妄想的観念の頻度には抑うつと全般性が,確信度には抑うつ,外的–人的帰属,および全般性が,苦痛度には抑うつと不安が影響を与えていた。以上のことから,被害妄想的観念の3側面それぞれは,影響をおよぼされる要因が異なることが示された。したがって,被害妄想的観念への介入に際しては,各側面ごとに,感情の統制,もしくは原因帰属の把握が必要であることが示唆された。
著者
森元 隆文 横山 和樹 池田 望
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌保健科学雑誌=SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES = SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES (ISSN:2186621X)
巻号頁・発行日
no.10, pp.13-24, 2021-03-01

本研究では,統合失調症に対する作業療法,および作業療法士が実施している心理社会的介入の内容と有効な側面を概観し、今後の実践と研究の方向性を検討するために,英語論文のレビューを実施した。3種類の検索データベースとハンドサーチにて論文を収集し 2 段階のスクリーニングを経た結果,34 編が分析対象となった。その内訳は,「作業活動・作業療法マネジメント」9 編,「手段的日常生活活動訓練」2 編「認知機能リハビリテーション」9 編,「運動療法」2 編,「心理教育・技能訓練」4 編,「就労支援」5 編,「地域生活支援」3 編であった。各介入の主な治療標的に加え精神症状や QOL など様々な側面への効果が示されていたが,特に認知機能は作業療法士による多くの介入で効果を示す重要な治療標的であることが示唆された。さらに,今後の実践や研究で作業に関する指標を扱うことで,作業療法の独自性やさらな効果を示すことにもつながると考える。
著者
横山 和樹 小笠原 那奈 小笠原 啓人 矢部 滋也 森元 隆文 池田 望
出版者
公益社団法人 北海道作業療法士会
雑誌
作業療法の実践と科学 (ISSN:24345806)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.47-55, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
23

本邦の作業療法におけるピアサポートの内容と作業療法士の役割を探索的に明らかにすることを目的に文献レビューを行った.対象文献11編を分析した結果,ピアサポートの内容は,多い順にフォーマルなピアサポート,インフォーマルなピアサポート,仕事としてのピアサポートに分類された.作業療法士の役割は,グループの立ち上げや運営,グループ参加前後の個別支援,当事者の希望や役割等の評価やそれを生かした実践,ピアサポートの活用に向けた治療構造や環境の調整等が報告された.また,ピアサポーターと連携する時の役割として,同等な立場としての関わり,当事者が安心・安全に活動するための体制づくり等が挙げられた.
著者
村上 元 森元 隆文 西山 薫 池田 望
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌保健科学雑誌 = Sapporo Medical University Sapporo Journal of Health Sciences
巻号頁・発行日
no.7, pp.25-30, 2018-03

妄想的観念はその主題に基づいて分けることができる.負の感情価の主題を持つ観念は被害妄想的観念となり,正の感情価の主題を持つ観念は誇大妄想的観念となる.妄想的観念は主題の相違によりその発生メカニズムが異なると想定されている.そこで,本研究では,被害妄想的観念は「疎外」「被害」の主題を持つ観念で,誇大妄想的観念は「被好意」「庇護」「他者操作」「自己肯定」の主題を持つ観念で構成されると想定し,各6つの主題に対する感情と原因帰属の影響を検討した.対象は統合失調症患者48名であり,全ての対象に妄想的観念チェックリスト,原因帰属尺度,気分調査票短縮版による測定を実施した.その結果,正あるいは負の感情価の主題を持つ妄想的観念ごとに抑うつや怒りなど共通する影響要因が存在した一方で,各6つの主題ごとに異なる影響要因も存在した.以上のことから,妄想的観念の主題に応じた介入を展開することが望ましいと言える.
著者
村上 元 森元 隆文 三浦 由佳 池田 望
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.248-254, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
11

今回,地方都市において,“誰でも参加できるSST”を当事者と協働で実施する経験を得た.経過の中で,医療・福祉の枠外で立場に関係なく誰でも参加できるという場の構造の不安定さと,それ故に起こったトラブルやその前兆への対処など様々な課題はあったものの,その場に継続的に,かつ主体的に参加して新しい仲間づくりを行う者も多く存在した.このことから,医療・福祉の枠を超えて作業療法士が地域において実践を試みることで,当事者・家族を含む地域住民の健康やつながりの構築に寄与する可能性が示唆された.一方で,その実践には,運営スタッフとプログラムが開催される地域の支援者とのつながり,当事者との協働が必要と考えられた.
著者
竹田 里江 山下 聖子 宮田 友樹 竹田 和良 池田 望 松山 清治 船橋 新太郎
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.384-393, 2016-08-15

要旨:日常生活場面を取り入れ,個人の興味・関心に配慮したワーキングメモリ課題を開発し,保続性の反応を呈する統合失調症患者に実施した.その結果,保続性の反応が改善し,BACS-Jのワーキングメモリ,運動機能,遂行機能の改善を認めた.また,意欲や活力,心の健康の改善が得られた.これらの結果は2回目介入時に再現性を認めた.本課題は,実生活の一場面をモデルに,思考・計画・判断・意思決定をするという特徴をもち,個人の興味・関心や遂行能力にテーラーメイドできる.興味・関心に配慮することは,課題に対する注意集中,記憶,思考,選択のしやすさに繋がり,潜在能力を喚起し,認知機能や意欲の改善に寄与することが示唆された.
著者
竹田 里江 竹田 和良 池田 望 松山 清治 石合 純夫 船橋 新太郎
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.452-462, 2012-10-15

要旨:ワーキングメモリ機能,目的志向的行動の計画や実行など前頭連合野機能を基盤にし,個人の興味・関心や遂行能力にテーラーメイド可能な訓練を開発した.今回,アルツハイマー型認知症の1症例に施行したところ,語の流暢性,抑制コントロール,記憶機能に向上を認めた.また,日常生活面での記憶,見当識,会話に改善が得られ,うつ状態評価尺度や症例の感想から情動面の改善も示唆された.本訓練は実生活に密着した内容で,対象に合わせて課題の難易度や題材を設定できる.単なる反復的な記憶訓練ではなく過去の記憶やアイディアの創出を刺激することを意図している.こうした特徴が症例の認知・情動の両側面の機能改善に寄与したと考えられた.
著者
池田 望 澤田 いずみ 小塚 直樹 山田 惠子 影山 セツ子 乾 公美
出版者
札幌医科大学
雑誌
札幌医科大学保健医療学部紀要 (ISSN:13449192)
巻号頁・発行日
no.8, pp.59-65, 2005-12
被引用文献数
1

札幌医科大学保健医療学部教務委員会は、平成16年5月に、『大学が今後、組織的に学生にどんな支援ができるのか』を検討するための学生支援ワーキンググループを立ち上げた。検討に際し、学生の実態を知るために学生生活を『学業』、『経済』、『健康』面に分類し、全学生に対してアンケート調査を行い、今後の学生支援の方向性をさぐるための基礎データを得ることができた。その結果、1)専門科目への早期暴露の必要性、2)学業に関わる困難感を相談できる窓口の確保、3)奨学金や授業料減免制度などの受給機会を得やすくするシステムづくり、4)カウンセリング制度などの相談体制の周知徹底を図ること、などの課題が明らかとなった。さらに、アンケート調査から見えてきた学生の問題点について考察した。The committee of Educational Affairs of the School of Health Sciences established a Working Group for student support in May 2004 to determine what the school could do to support students systematically. The lifestyles of students categorized by educational, financial and health problems were investigated by a self-administered questionnaire survey. It was found that there was 1)a need for earlier exposure to advanced courses, 2)the establishment of a section for students to consult about academic problems, 3)the arrangement of a system making it easier to receive a scholarship or reduced tuition, and 4)the making sure the students are aware of counseling and consulting system. Some of the other issues of students are also discussed.