著者
河原 亜紀子
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 = Journal of the Medical Society of Toho University (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.222-230, 2004-07-01
参考文献数
20

目的:伝染性軟属腫の感染経路は接触的感染が推察されてきたが,ウイルス学的に検討された報告はない。今回,自家接種や器物を媒介する伝播経路についてpolymerase chain reaction (PCR)法を用いて検討した。対象および方法:まず,伝染性軟属腫患者20例を対象にしてrestriction fragment length polymorphism-PCR法にてウイルスの型別を行った。次に,nested PCR法を用いて前述の患者における両手と非病変部10箇所から伝染性軟属腫ウイルス(MCV)DNA検出を試み,アトピー性皮膚炎(AD)合併の有無で検出率を比較した。すなわち,AD合併者では掻破のため両手にMCVDNAが高率に付着し,全身の広範囲からMCVDNAが検出されると予想した。さらに,伝染性軟属腫患者を取り囲む環境中にある生活用品や小児科・皮膚科クリニックにある外来備品からnested PCR法を用いてMCVDNAの検出を試みた。また,従来から感染源であると言われているスイミングスクールで共用されるビート板からもMCVDNAの検出を試みた。結果:全患者の病変部からMCV 1型が検出された。また,AD合併患者とAD非合併患者の両群間で両手および非病変部からの検出率に有意差がなかった。さらに,環境中の生活用品からは患児の手が触れている可能性がある玩具や机などや,小児科・皮膚科クリニックにある外来備品からもMCVDNAが検出された。また,スイミングスクールで共用されるビート板からMCVDNAが高率に検出された。結論:AD合併者とAD非合併者からのMCVDNA検出率に差がなかったことから,全身へのウイルス散布には手による掻破以外の経路の存在が推察された。また,生活用品を媒介する伝染性軟属腫の伝播経路の存在が示唆された。