著者
阿部 達夫
出版者
東邦大学医学会
雑誌
東邦医学会雑誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.p318-327, 1982-09
著者
原 真範
出版者
東邦大学医学会
雑誌
東邦医学会雑誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.105-107, 2021-09-01

総説日本が直面する少子高齢化に伴う労働人口減少を背景に,「働き方改革関連法」が2019年4月から施行され,2024年4月からは医師の時間外労働規制が開始予定となっている.医師の働き方改革に関する政府検討会は,基本となる勤務医の時間外労働の上限水準「(A)水準」を設け,臨時的な必要がある場合は月100時間,年960時間と定めた.外科系診療科,産婦人科,救急科,臨床研修医においては,現状で約半数の医師がこの水準をオーバーしており,規制により医療の質の維持と労働時間短縮という相反するミッションが課せられることになり,十分な医師の確保が必要になる.大学病院の勤務医は,診療・教育・研究・地域医療支援と多くの任務を抱えており,当院においても医師の働き方改革を実現するためには,ワーキンググループを構築し,業務の見直しと効率化を図り,多様性,柔軟性のある働き方を取り入れ労働力を確保することが必要である.
著者
早田 英二郎
出版者
東邦大学医学会
雑誌
東邦医学会雑誌 = Journal of Medical Society of Toho University (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.114-116, 2021-09

総説2020年4月の緊急事態宣言後,東邦大学医療センター大森病院全体としては診療の縮小,婦人科予定手術の延期等の対応を取ってきたが,周産期部門は総合周産期母子医療センターとして多数のハイリスク分娩予定者が存在し,緊急性の高い胎児治療症例もいること,さらにCOVID-19感染妊婦の受け入れも求められたことから,診療規模はほぼ不変の状態であった.我々は,病院の方針に従いながら診療・感染防御・教育をいかに維持するかを考え,独自のマニュアルを作成し,感染流行の状況に応じて院内ルールを柔軟に運用している.ここでは2020年4月に発出された第1回緊急事態宣言当時の当院産婦人科の取り組みについて述べる.
著者
廣井 直樹 宮崎 保匡 寺井 秀樹 中島 早苗 斉藤 早代子 金子 幸代 山室 渡 比嘉 眞理子
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.341-346, 2005-09-01
参考文献数
11

食欲不振・嘔吐・嘔気を主訴に入院した70歳の女性。心拍数は72回/分・整であり,動悸や手指振戦はみられなかった。入院後も自覚症状は改善せず,徐々に気力の減退が著明となり食事摂取不能・全身の疼痛も出現した。TSH 0.1μIU/ml以下,FT3 20.0pg/ml以上,FT4 12.0ng/dl以上,TRAb 5.6IU/Lでありバセドウ病による無欲性甲状腺機能亢進症と診断した。Thiamazol 30mg/dayにて内服治療を開始したが精神症状の改善はみられず,さらに抗精神病薬を開始するが内服すら不可能な状況となった。高Ca血症を認めたため血清Caの補正を行ったところ,血清Caの低下に伴いうつ症状は改善した。本症例では一般的な甲状腺機能亢進症患者にみられるようなイライラや不眠,振戦,動悸や頻脈などの活動性亢進に伴う種々の症状は認めなかった。高齢者の場合,食欲不振や嘔気・嘔吐,無動,抑うつ傾向など比較的衰弱した印象が前面に出ることがあり,このような病態を無欲性甲状腺機能亢進症と呼ぶ。バセドウ病における精神症状発症の原因はいまだ明らかではないが,高Ca血症が影響しているとの報告もある。今回われわれは高Ca血症がうつ症状の進展に関与したと思われる無欲性甲状腺機能亢進症の1例を経験したので報告する。
著者
武藤 彩
出版者
東邦大学医学会
雑誌
東邦医学会雑誌 = Journal of Medical Society of Toho University (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.122-133, 2021-09

総説東邦大学医学部では2017年度にURAが導入され,研究支援業務に携わっている.URA制度の拡充を検討するためには,研究支援効果の評価が必要である.そこで,論文出版数と科研費獲得件数を指標として東邦大学の研究力の現状を把握し,URA導入の効果を検討した.論文出版数および科研費採択件数に基づく比較では,医学部を擁する私立大学31校の中で,東邦大学医学部の研究力は総合的にみると平均的な位置付けであることが見出された.科研費「若手研究」の研究種目に関してはこれまで平均の半分程度の採択件数であったが,2020年度には改善の兆しが見られた.これらのことから,若手研究者の支援においてURA配置の効果がすでに現れていると考えられる.今後は,URA増員などの支援体制の拡充や,科研費申請時期に過度に集中する支援業務を分散させるような支援方法の工夫が望まれる.In 2017, the Graduate School of Medicine of Toho University has established a research administration division, hiring the institution's first university research administrator (URA). The URA is expected to provide support toward enhancing research activity at the university. To evaluate the support provided by the URA, I quantitatively assessed the research activities at Toho University based on the number of publications and awarded extramural grants. The number of publications was obtained by searching the Web of Science and PubMed databases. The number of awarded MEXT/JSPS KAKENHI (Grants-in-Aid for Scientific Research) was obtained by searching the KAKEN database. I made a comparison of Toho University's research activities with those of the other universities using those search results. The medical school of Toho University showed an average performance level compared to 30 other private Japanese universities that have a medical school. In the KAKENHI research category of Grant-in-Aid for Early-Career Scientists, the number of grants awarded to Toho University's medical school was about half the average of the 31 institutions. However, Toho University did show a notable increase in that number in 2020. The positive effects of the support provided by the URA were evident in the research category of Grant-in-Aid for Early-Career Scientists. Toho University's medical school submits a large number of grant applications. The Division of Research Administration receives excessive support requests as the deadlines for grant applications approach. Thus, it may be necessary to devise a system that more effectively copes with the requests received and also to consider recruiting more URAs.
著者
河原 亜紀子
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 = Journal of the Medical Society of Toho University (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.222-230, 2004-07-01
参考文献数
20

目的:伝染性軟属腫の感染経路は接触的感染が推察されてきたが,ウイルス学的に検討された報告はない。今回,自家接種や器物を媒介する伝播経路についてpolymerase chain reaction (PCR)法を用いて検討した。対象および方法:まず,伝染性軟属腫患者20例を対象にしてrestriction fragment length polymorphism-PCR法にてウイルスの型別を行った。次に,nested PCR法を用いて前述の患者における両手と非病変部10箇所から伝染性軟属腫ウイルス(MCV)DNA検出を試み,アトピー性皮膚炎(AD)合併の有無で検出率を比較した。すなわち,AD合併者では掻破のため両手にMCVDNAが高率に付着し,全身の広範囲からMCVDNAが検出されると予想した。さらに,伝染性軟属腫患者を取り囲む環境中にある生活用品や小児科・皮膚科クリニックにある外来備品からnested PCR法を用いてMCVDNAの検出を試みた。また,従来から感染源であると言われているスイミングスクールで共用されるビート板からもMCVDNAの検出を試みた。結果:全患者の病変部からMCV 1型が検出された。また,AD合併患者とAD非合併患者の両群間で両手および非病変部からの検出率に有意差がなかった。さらに,環境中の生活用品からは患児の手が触れている可能性がある玩具や机などや,小児科・皮膚科クリニックにある外来備品からもMCVDNAが検出された。また,スイミングスクールで共用されるビート板からMCVDNAが高率に検出された。結論:AD合併者とAD非合併者からのMCVDNA検出率に差がなかったことから,全身へのウイルス散布には手による掻破以外の経路の存在が推察された。また,生活用品を媒介する伝染性軟属腫の伝播経路の存在が示唆された。
著者
枝松 秀雄
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.290-295, 2005-09-01

人工内耳は,両耳とも聾のために補聴器では全く音感が得られないような患者の内耳の蝸牛内に第8神経を電気刺激する電極を埋め込む手術と,手術後の言語聴取のためのリハビリテーションから構成され,聴覚機能の回復と社会復帰を目指す一連のチーム医療である。人工材料の埋め込みによる感覚機能の回復を目指す医療のなかでも,人工内耳は既に世界でも日本でも症例数の多さから,安定した良好な成績の医療として高く評価されている。手術前には,筆談によるコミュニケーションしかできない患者のなかには,手術後にリハビリを受けて聴覚機能を取り戻し,外来予約も自分で電話できるようになる,あるいは音楽会にも出かけられる症例も存在する。高度難聴の患者は社会的にも経済的にも弱者であるため,人工内耳による聴力回復は唯一の福音である。人工内耳は耳鼻科の高度先進医療として開始されたが,保険認可された現在でも施設認可のために各都道府県に申請を行う。その認可基準には,年間の耳科手術数,常勤医数,人工内耳経験医,言語療法のためのスタッフなどが必要とされる。東邦大学医療センター大森病院耳鼻咽喉科は,2005年2月に人工内耳の施設認可を受けた。今後は,城南地区の基幹病院として高度難聴症例に人工内耳治療を積極的に行っていかなければならない。
著者
庄司 宗介
出版者
東邦大学医学会
雑誌
東邦医学会雑誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.715-722, 1972-12
著者
黒崎 久仁彦
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.262-263, 2005-07-01

医師法では医師の異状死届出が義務づけられているが,異状死に関する具体的な判断基準がいまだに確立されていないこともあり,実際の医療現場において相当数の安当性を欠く異状死取扱いが行われている。近年,医療行為に関連した死亡例について,どこまでが異状死であるかの解釈を巡って医学界内で論議を呼んでいるが,このような医療関連死に立会った医師は,医療上のミスの有無だけではなく,患者家族の十分なインフォームド・コンセントが得られているかという点も考慮した上で,異状死届出の必要性を判断しなければならない。最近の医療関連死の増加に伴い,医学的および法的にこれらの症例を適切に処理することができる中立的専門機関の早急な設立が期待される。

1 0 0 0 OA 再結成

著者
岡島 行一
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, 2005-01-01
著者
柳川 秀雄 小早川 信一郎 片山 康弘 杤久保 杤久保
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.291-298, 2004-09-01

目的:光学部エッジデザイン,支持部の形状がそれぞれ異なるシリコーン製眼内レンズ(IOL)を用いて,後嚢混濁面積の差異,後嚢への水晶体上皮細胞(LEC)の遊走の程度について比較検討した。方法:白色家兎(51羽)に4種類のIOLを嚢内移植した。IOLは全てキャノンスター社製で,スリーピースでラウンドエッジ(3PRE)のAQ2013Vとシャープエッジ(3PSE)のAQ310NV,ワンピースでラウンドエッジ(1PRE)のAA4203Fとシャープエッジ(1PSE)の改良型IOLの4種類である。超音波摘出術施行3週間後に眼球を摘出し,後嚢混濁面積の解析,LECの観察を行った。結果:AQ2013V群,AA4203F群のそれぞれの混濁面積はAQ310NV群や改良型IOL群に比べ有意に大きかった。1P両群で,支持部におけるLECの増殖抑制が認められた。また,3PRE群や1PRE群のほぼ全眼に,IOL後面へのLECの遊走が認められたのに対し,3PSE群や1PSE群では遊走抑制が認められた。結論:シリコーン製IOLにおいて,シャープエッジデザインのものは後発白内障抑制に効果が期待できる。シャープエッジの1P型IOLは,(1)支持部におけるLECの増殖抑制と,(2)エッジにおけるLECの遊走抑制が期待でき,後発白内障抑制に効果的であることが示唆された。

1 0 0 0 OA 難聴の治療

著者
小田 恂
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.69-73, 2004-03-01

耳疾患の病態生理に関して20世紀の初頭までにはかなり解明されていたが,難聴の治療には結びつかなかった。20世紀の前半,ペニシリンの発見により感染症の治療ができるようになってから急性化膿性中耳炎の治療ができるようになり,1950年代以降は手術法の改良によって慢性中耳炎による難聴の聴力改善が可能になった。1970年ごろから突発性難聴など急性感音難聴の薬物治療ができるようになり,1980年代以降には人工内耳の手術によって高度感音難聴の治療も可能となった。また,補聴器は技術の改良によって小型・軽量化され伝音難聴,感音難聴のどちらにも適応するようになってきた。このように,20世紀はそれまで顧みられなかった難聴の治療が可能になった時代である。