著者
任 雲 境 睦
出版者
桜美林大学
雑誌
桜美林経営研究 (ISSN:21860173)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-52, 2011-03-20

本稿は金融危機中の米国の金融機関とくに生命保険業(以下、「生保業」という)の事例と日本の生命業の実態調査を分析することによって、金融危機後の日本における生保業のコーポレートガバナンスのあり方を検討する。主な研究結果は以下の通りである。まず、本稿は、金融危機中米国の金融機関のコーポレートガバナンスの状況を考察することを通じて、経営陣のリスクテイクレベルの上昇とそれに対する取締役会のガバナンスの欠如はコーポレートガバナンスの大きな問題であり、今回の金融危機の教訓であるとの結果を明らかにしている。次に、従来の日本の生命保険会社はリスクテイクに対して慎重であったが、金融危機の影響と相まって、生保業を巡る経営環境はかつて米国の1990年代の生保業が経験した状況と類似しており、今後、日本の生保業も否応なしによりリスクテイク的な経営行動を行わなければならず、リスクマネジメントの高度化が一層求められるという結論を得ている。第三に、米国の教訓と金融危機後のOECDとりわけCROフォーラムの提言に基づいて、日本の生保業の今後の存続と成長のためには、日本的なコーポレートガバナンスと調和した取締役会レベルでの、リスクマネジメントとコーポレートガバナンスを融合させた統合型リスクガバナンスの構築が必要であるとの結論に至っている。