著者
金 永洙 Yongzhu JIN 桜美林大学国際学研究科 Graduate School of International Studies J. F. Oberlin University
出版者
桜美林大学大学院経営学研究科
雑誌
桜美林経営研究 = The J. F. Oberlin journal of business management studies (ISSN:21860173)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.67-82, 2011-03-20

トヨタは1960年代からASEANでKD生産を行い、現在は既にASEANで域内相互補完体制が構築されている。また、1980年代より米国で本格的な現地生産をはじめ、1990年代は現地生産を欧州にも広げた。トヨタとサプライヤー間の長期安定な取引関係とハイレベルの協力関係はトヨタの海外生産にも共同進出する形で延長されている。一方、中国での本格的な乗用車の量産は、2002年より天津で開始された。完成車に限定するとトヨタは現在中国で2つの中国現地パートナーと3つの合弁会社、4つの生産拠点を持ち、16車種を生産している。日本国内で数十年をかけて築き上げたトヨタの生産ネットワークは中国でどのように構築されているのか。本稿はこの基本問題を追いながら、トヨタの中国進出と現地生産ネットワークの構築状況を分析する。トヨタはこれまで中国で9社の内製部品拠点で生産開始した他、8社のグループ企業と149社のグループ外協豊会メンバー企業が中国進出し、協豊会メンバー企業全体の73.0%の157社が現地生産し、465の中国現地生産拠点を設置している。ジャスト・イン・タイム(JIT:Just In Timeの略)方式で自動車を生産しているトヨタにとって、直接部品を供給する1次サプライヤーの立地状況は極めて重要な問題で、また現地生産・現地調達主義を重視している完成車生産にとってサプライヤーの進出時期もトヨタの効率的な量産体制の構築を左右する。そのため、本稿では協豊会メンバー企業215社を対象に、中国現地での生産状況を立地選択と完成車生産拠点への集中状況、進出時期を中心に分析し、トヨタの中国現地生産ネットワークの構築状況を明らかにすることを試みる。
著者
任 雲 境 睦
出版者
桜美林大学
雑誌
桜美林経営研究 (ISSN:21860173)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-52, 2011-03-20

本稿は金融危機中の米国の金融機関とくに生命保険業(以下、「生保業」という)の事例と日本の生命業の実態調査を分析することによって、金融危機後の日本における生保業のコーポレートガバナンスのあり方を検討する。主な研究結果は以下の通りである。まず、本稿は、金融危機中米国の金融機関のコーポレートガバナンスの状況を考察することを通じて、経営陣のリスクテイクレベルの上昇とそれに対する取締役会のガバナンスの欠如はコーポレートガバナンスの大きな問題であり、今回の金融危機の教訓であるとの結果を明らかにしている。次に、従来の日本の生命保険会社はリスクテイクに対して慎重であったが、金融危機の影響と相まって、生保業を巡る経営環境はかつて米国の1990年代の生保業が経験した状況と類似しており、今後、日本の生保業も否応なしによりリスクテイク的な経営行動を行わなければならず、リスクマネジメントの高度化が一層求められるという結論を得ている。第三に、米国の教訓と金融危機後のOECDとりわけCROフォーラムの提言に基づいて、日本の生保業の今後の存続と成長のためには、日本的なコーポレートガバナンスと調和した取締役会レベルでの、リスクマネジメントとコーポレートガバナンスを融合させた統合型リスクガバナンスの構築が必要であるとの結論に至っている。