著者
片山 善博 Yoshihiro Katayama
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of culture in our time
巻号頁・発行日
vol.131, pp.1-16, 2015-03-31

遺族が故人とのつながりを維持することがグリーフケア(特に遺族のケア)にとって重要であるという研究が様々な課題を抱えながらも主流になりつつある.とはいえ,遺族の個人に対する関係は一方的なものである.近年の承認論の研究では,自己と他者との間の承認関係が自己の成り立ちやアイデンティティにとって極めて重要であることが指摘されている.従って,遺族が故人との承認関係を維持するためには,故人が他者の地位にあることが望ましいことになる.遺族ケアの課題として,できるだけ双方向的なつながりを維持できるための故人の他者化が必要である.しかし,故人はいわゆる実在する他者ではない.そこで本論では,どのような他者化が可能なのか,また双方向的なつながりの維持のために何が必要なのかを考察した.精神的な他者化を推進する個別的なケアと同時に,こうした関係を安定的に維持させる社会・文化的な価値の創造が必要であると結論づけた.
著者
二木 立
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.107-130, 2018-03-31

私は,日本福祉大学に在職中,医療経済・政策学の視点から,政策的意味合いが明確な実証研究と医療・介護・福祉政策の分析・予測・批判・提言の「二本立」の研究・言論活動を行った.その際,現実の医療と医療政策の問題点を事実に基づいて明らかにするだけでなく,医療制度・政策の改善に多少なりとも寄与しうる研究や提言も行うように努めた.ここで「医療経済・政策学」とは,「政策的意味合いが明確な医療経済学的研究と,経済分析に裏打ちされた医療政策研究との統合・融合をめざし」て,新たに考えた造語・新語で,私も編集委員となって2000 年代初頭に刊行した『講座 医療経済・政策学』(勁草書房.全6 巻)で初めて用いた. 在職した33 年間に,単著23 冊,単著に準ずる共著2 冊の合計25 冊等を出版した.第1 節では,それらの出版順に,概説及び各著書に収録した論文のうち,学術的価値が高いか先駆的で歴史的意義があると自己評価している論文,または私にとって「思い出深い」論文を紹介する.第2 節では,日本医療の将来予測を行うために考案した3 つの分析枠組み・概念について述べる.