著者
金城 明美 浦崎 武 Kinjo Akemi Urasaki Takeshi
出版者
琉球大学教育学部附属障害児教育実践センター
雑誌
琉球大学教育学部障害児教育実践センタ-紀要 (ISSN:13450476)
巻号頁・発行日
no.10, pp.129-143, 2008

「発達を形成的に考えると違う視点が見えてくる」(浜田2007)ことを踏まえ,広汎性発達障害の子どもは,生活する沖縄の自然風土文化の中で,かかわりがどう編み直され形成されていくか検討する。この事例は,自然環境そのものに青や緑の明るい色彩が存在する沖縄に在住するY児であり,かかわる特別支援学級の少人数メンバーと担任,学校,母親と,Y児のふるまいとの間にみるやりとりである。Y児は,沖縄県に多くみられる三角頭蓋手術というエピソードを持つ。言葉という世界に遅れがあるY児への母親の願いは,「言葉がでるようになってほしい」であった。この提示によって学校の枠組みが構成されていくが,支援学級少人数メンバーと担任は,母親の願いよりも「どうつきあうか」が意識されていく。「怒りの表出」「模倣」「肯定的な言葉」等,支援学級内でわき起こる状況は,多様なかかわりの中にある。母親の感情と言葉は,言葉に遅れのあるY児のふるまいを受けた言葉であり,Y児を中心に編み直されていく。編み直しの中でY児は,「笑い」が増え模写と記名が形成されていく。周囲は「見せるかかわり」から,「かかわる人々の広がり」となり「沖縄が意図されていく」という構成をたどる。