著者
田 栄富 王 橋
出版者
久留米大学経済社会研究会
雑誌
経済社会研究 = The journal of the Society for Studies on Economies and Societies (ISSN:24332682)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.25-44, 2019-01-25

日本介護保険制度が実行されてから,介護費用が膨らみ,介護財政を圧迫し,第1,2号被保険者は保険料負担の増加を強いられている。今後の負担は更に重くなる。一方,介護サービス業は国民経済におけるパフォーマンスを確実に増している。投入構造で確認できた介護サービス業は粗付加価値投入であり,そのなかで雇用者所得は93.5%に達している。介護保険三施設の長期労働生産性を計測した結果,全産業平均を大きく下回っている。同部門は日本の産業部門においても有数の成長部門であり,労働・資本等の生産要素がこの部門に集約しつつある。しかし,低労働生産であり,資源配分を歪める恐れもある。また,労働生産性と賃金の間には密接な関係が確認されている。介護サービス業の低労働生産性は必然的に賃金に影響する。つまり低労働生産性から低賃金へという成り行きは従業員の高離職率,低い定着率をもたらす。結局,介護サービス業は人手不足という事態に直面する。賃金を引き上げるには,公定価格の介護報酬のもとでいかに労働生産性を上昇させるかが重要な課題である。