著者
三輪 芳朗
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學論集 = The Journal of Economics (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.55-122, 2020-05-01

2016年8月の山本幸三行政改革担当大臣就任と続く筆者(三輪)の大臣補佐官就任以後の準備期間を経た同年12月の経済財政諮問会議の「統計改革の基本方針」決定により,「EBPM推進体制の構築」を第1議題とする統計改革推進会議が創設された.この会議の活動開始を明確な契機として,政府のEBPM推進の取り組みがスタートし,その後の大方の予想を上回るスピードでの展開を経て今日に至っている.2020年2月に刊行された大橋弘編『EBPMの経済学』(大橋編,2020)は,この取り組みの本格化後まもなくTCERのconference企画としてスタートし,2年強の時間をかけて出版にこぎつけたものである.各論文(そしてペアとなる各コメント)の内容はかなりのバラツキがある(端的に言えば,実質的にバラバラ). 本稿は,中心的読者としてEBPM推進に取り組む政策立案担当者を含むEBPM推進関係の実務家を想定する.政策決定は政治プロセスの中で行われる.筆者は,いわば至近距離に位置してこの展開過程を注視し時には参画してきた.この経緯・経験に基づき,必要最小限の関連情報を,支障のない範囲内で提示して,本稿の読者の参考にし,本書の内容の理解と今後の活動に役立てる一助とする.
著者
石原 俊時
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學論集 = The Journal of Economics (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.23-62, 2018-04-01

スウェーデン救貧連盟は,1918年の救貧法改革の実現に貢献した有力な圧力団体として注目されてきた.また,その児童福祉に関わる活動も,スウェーデンの児童福祉の発展に重要な役割を果たしたことが知られている.しかし,このように活動の一部に関心が集中する一方で,そもそもこの団体が如何なる課題をもち,どのような活動を展開したのかを検討する作業は十分行われてこなかった.そこで,本稿では,担った課題や活動の展開を万遍なく把握することを通じて,この団体の全体像を明らかにし,それによりこの団体がスウェーデン福祉国家の形成に果たした歴史的役割を解明することを試みることとする.この第4部では,1913年の国民年金の成立と1918年の救貧法改正に至る過程に,この団体がどのように関与し,結果としてそれが組織展開にどのように影響を与えたのかを検討する.Svenska fattigvårdsförbundet is known as the influential pressure group which had played an important role in establishment of the poor law of 1918. Its activities for child welfare has also attracted attention because of its remarkable contribution to the development of child welfare in Sweden. But man has not sufficiently scrutinized for which purposes this organization was established or how and what kind of activities this organization had developed. In this article we try to grasp whole aspect of this organization through examining the problems this organization took and the activities that unfolded. In that way we want to elucidate which role Svenska fattigvårdsförbundet had played in the formation of the Swedish welfare state. In this part of this article we grasp how this organization participated in the formation of Swedish national pensions and the establishment of the poor law of 1918. And we consider how it developed its activities through this process.論文/Article