- 著者
-
長沢 栄史
下野 義人
本郷 次雄
- 出版者
- 日本きのこセンター菌蕈研究所
- 雑誌
- 財団法人日本きのこセンター菌蕈研究所研究報告 = Reports of the Tottori Mycological Institute (ISSN:03888266)
- 巻号頁・発行日
- no.38, pp.6-13, 2000-12 (Released:2011-03-05)
従来日本から未記録であったモエギタケ科のきのこ,Hypholoma tuberosum Redhead & Kroeger(キンカクイチメガサ/菌核市女傘:新称)の日本における発生について報告した.本種は1987年にカナダ,バンクーバー産の標本に基づいて新種記載された比較的新しい種類であるが,Hypholoma(=Naematoloma)クリタケ属において菌核を形成する点を著しい特徴とする.カナダからの報告以後は,オーストラリアおよびベルギーから報告されているのみであった.菌核は地中に形成され,褐色で不規則に歪み,大きさは通常10-30×10-25×10-20mm.子実体は一つの菌核から1-5個生じ,比較的小形.かさは径2-4cm位,黄土色~帯褐橙色で湿時やや粘性を帯びる.柄はつばを欠き,傘より淡色で細長く,菌核が土に深く埋っているときは基部が根状に長く伸びる.胞子紋は暗紫褐色.胞子は楕円形で発芽孔を有し,大きさ8.5-12×5-6.5μm(平均10×5.5μm).日本では秋,芝生,畑,公園内の植木の下,あるいは花壇などに発生し,鳥取県(鳥取市),京都府(京都市),大阪府(高槻市)および新潟県(上越市)で発見されている.国内における生態および分布の状況から推察して,本菌は恐らく外国からの移入種であり,また,国内に広く分布しているのではないかと考えられる.