著者
長沢 栄史 Petersen R.H.
出版者
日本きのこセンター菌蕈研究所
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-49, 2006 (Released:2011-03-05)

日本およびロシア極東地域を含む東アジア温帯に分布するビロードツエタケ属菌(Xerula)として、3亜属[ビロードツエタケ亜属(subgen.Xerula)、ウスゲツエタケ亜属(subgen.Alboomenosae)、ツエタケ亜属(subgen.Radicaa]の9種3変種を認め、検索表(報告では取り扱わなかった数種の域外近縁種を含む)、記載および図を付して報告した。過去の文献において一般的なX.radicaa(Relhan)Doerfel(ツエタケ)、X.pudens(Pers.)Singer(ビロードツエタケ)およびX.longipes(P.Kumm.)Maire(ビロードツエタケ)は、それらの中に認められなかった。また、本報告ではビロードツエタケ属の特徴についても詳細に論じた。報告された菌は以下の通りである。ビロードツエタケ亜属:X.hongi Doerfelエゾノビロードツエタケ、X.sinopudens R.H.Peersen and Nagas.(新種)コブリビロードツエタケ(新称)。ウスゲツエタケ亜属(新称):X.amygdaliformis(Yang and Zang)R.H.Peersen and Nagas.(転属新組合せ)オキナツエタケ(新称)、X.amygdaliformis var.bispora R.H.Peersen&Nagas.(新変種)フタツミオキナツエタケ(新称)、X.chiangmaiae R.H.Peersen and Nagas.(新種チェンマイツエタケ(新称)、X.chiangmaiae var.raphanipes(Berk)R.H.Peersen and Nagas.(転配置新組合せ)ヒマラヤツエタケ(新称)。ツエタケ亜属:X.aureocysidiaa R.H.Peersen and Nagas.(新種)ミヤマツエタケ(新称)、X.globospora R.H.Peersen and Nagas.(新種)フキアゲマルミノツエタケ(新称)、X.japonica Doerfelマルミノツエタケ、X.orienalis R.H.Peersen and Nagas.(新種)ブナノモリツエタケ(新称)、X.orienalis var.margariella R.H. and Nagas.(新変種)コブリブナノモリツエタケ(新称)、X.vinoconusa R.H.Peersen and Nagas.(新種)キタカタチャシミツエタケ(新称)。
著者
Daniel GUEZ 長沢 栄史
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.jjom.H11-75, 2000 (Released:2020-10-13)
参考文献数
16

従来日本から未記録であったスッポンタケ科の菌,Mutinus elegans の日本における発生を初めて報告し,本種にタヌキノベニエフデ(狸紅絵筆)の和名を与えた.本種はキツネノエフデ(M.bambusinus)に類似するが,子実体がより大形で,かつほぼ全体的に比較的濃い赤色(淡紅赤色~珊瑚赤色)を帯びる点で区別される.産地としては今のところ大阪府高槻市が知られているのみであるが,11月から12月にかけて,道端や開放地などの良く陽の当たる場所においてマダケやクヌギ,ケヤキ,クスノキなどの木の下あるいはそれらの近くの地面に発生する.
著者
工藤 伸一 長沢 栄史
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.33, 2006

青森市郊外のスギ植林地内草地で採集された2種のきのこを調査した結果,それぞれアカヤマタケ属のアカヤマタケ節(sect. <I>Hygrocybe</I>)およびベニヤマタケ節(sect. <I>Coccineae</I>)に所属する新種と考えられたので報告する. 1)<I>Hygrocybe niveoconica</I> (sp. nov.)_-_トガリユキヤマタケ(新称):子実体は中形で,全体が淡クリーム白色_から_白色.傘は平滑,湿時弱い粘性あり,初め円錐状鐘形,のち開くが中央突出する.ひだは柄に湾生し狭幅,やや密.柄は細長く,基部で多少細まり,中空.表面は平滑.胞子は楕円形,7_-_10×5_-_7μm.担子器は通常4胞子性,ときに2胞子性.アカヤマタケ節に所属し,アケボノタケ <I>H. calyptriformis</I> (Berk.& Br.) Fayodに最も近縁と考えられる.しかし,同種は傘がライラック色を帯び,胞子が6.5_-_7.5×4_-_5μmと小形,また側および縁シスチジアをもつなどの点で異なる.外観的には北アメリカの <I>H. pura</I> (Peck) Murrill(ナナイロヌメリタケ節 sect. <I>Subglutinosae</I>)にも多少似るが,同種は柄に強い粘性があり,また傘および柄の傷んだところがピンク色を帯びると言われている (Hesler & Smith, 1963).2)<I>Hygrocybe ramentacea</I> (sp.nov.)_-_クロゲヤマタケ(新称):子実体は中形.傘は黄色の地に暗褐色の顕著な繊維状小鱗片を生じ,初めやや円錐状丸山形,のち開いて中高の平らとなる.ひだは直生_から_上生あるいは多少垂生し,広幅,疎,淡黄色.柄は下方で多少太まり,中空.表面は黄色,基部で淡黄白色,繊維状.胞子は楕円形_から_長楕円形,8_-_11(_-_13)×5.5_-_7(_-_8)μm.担子器は4胞子性.側および縁シスチジアをもつ.ベニヤマタケ節に所属し,小笠原の母島から報告のあるクロゲキヤマタケ <I>H. hahashimensis</I> (Hongo) Hongoに極めて近縁な種と考えられる.しかし,同種は胞子が7_-_9.5×4.5_-_6.5μmと小形,縁および側シスチジアを欠くと言われている(本郷, 1987).
著者
Petersen Ronald H. 長沢 栄史
出版者
日本きのこセンター菌蕈研究所
雑誌
菌蕈研究所研究報告 (ISSN:03888266)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-49, 2005
被引用文献数
4

日本およびロシア極東地域を含む東アジア温帯に分布するビロードツエタケ属菌(Xerula)として、3亜属[ビロードツエタケ亜属(subgen.Xerula)、ウスゲツエタケ亜属(subgen.Alboomenosae)、ツエタケ亜属(subgen.Radicaa]の9種3変種を認め、検索表(報告では取り扱わなかった数種の域外近縁種を含む)、記載および図を付して報告した。過去の文献において一般的なX.radicaa(Relhan)Doerfel(ツエタケ)、X.pudens(Pers.)Singer(ビロードツエタケ)およびX.longipes(P.Kumm.)Maire(ビロードツエタケ)は、それらの中に認められなかった。また、本報告ではビロードツエタケ属の特徴についても詳細に論じた。報告された菌は以下の通りである。ビロードツエタケ亜属:X.hongi Doerfelエゾノビロードツエタケ、X.sinopudens R.H.Peersen and Nagas.(新種)コブリビロードツエタケ(新称)。ウスゲツエタケ亜属(新称):X.amygdaliformis(Yang and Zang)R.H.Peersen and Nagas.(転属新組合せ)オキナツエタケ(新称)、X.amygdaliformis var.bispora R.H.Peersen&Nagas.(新変種)フタツミオキナツエタケ(新称)、X.chiangmaiae R.H.Peersen and Nagas.(新種チェンマイツエタケ(新称)、X.chiangmaiae var.raphanipes(Berk)R.H.Peersen and Nagas.(転配置新組合せ)ヒマラヤツエタケ(新称)。ツエタケ亜属:X.aureocysidiaa R.H.Peersen and Nagas.(新種)ミヤマツエタケ(新称)、X.globospora R.H.Peersen and Nagas.(新種)フキアゲマルミノツエタケ(新称)、X.japonica Doerfelマルミノツエタケ、X.orienalis R.H.Peersen and Nagas.(新種)ブナノモリツエタケ(新称)、X.orienalis var.margariella R.H. and Nagas.(新変種)コブリブナノモリツエタケ(新称)、X.vinoconusa R.H.Peersen and Nagas.(新種)キタカタチャシミツエタケ(新称)。
著者
長沢 栄史 下野 義人 本郷 次雄
出版者
日本きのこセンター菌蕈研究所
雑誌
財団法人日本きのこセンター菌蕈研究所研究報告 = Reports of the Tottori Mycological Institute (ISSN:03888266)
巻号頁・発行日
no.38, pp.6-13, 2000-12 (Released:2011-03-05)

従来日本から未記録であったモエギタケ科のきのこ,Hypholoma tuberosum Redhead & Kroeger(キンカクイチメガサ/菌核市女傘:新称)の日本における発生について報告した.本種は1987年にカナダ,バンクーバー産の標本に基づいて新種記載された比較的新しい種類であるが,Hypholoma(=Naematoloma)クリタケ属において菌核を形成する点を著しい特徴とする.カナダからの報告以後は,オーストラリアおよびベルギーから報告されているのみであった.菌核は地中に形成され,褐色で不規則に歪み,大きさは通常10-30×10-25×10-20mm.子実体は一つの菌核から1-5個生じ,比較的小形.かさは径2-4cm位,黄土色~帯褐橙色で湿時やや粘性を帯びる.柄はつばを欠き,傘より淡色で細長く,菌核が土に深く埋っているときは基部が根状に長く伸びる.胞子紋は暗紫褐色.胞子は楕円形で発芽孔を有し,大きさ8.5-12×5-6.5μm(平均10×5.5μm).日本では秋,芝生,畑,公園内の植木の下,あるいは花壇などに発生し,鳥取県(鳥取市),京都府(京都市),大阪府(高槻市)および新潟県(上越市)で発見されている.国内における生態および分布の状況から推察して,本菌は恐らく外国からの移入種であり,また,国内に広く分布しているのではないかと考えられる.