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著者
菅 木志雄
出版者
金沢美術工芸大学
雑誌
金沢美術工芸大学紀要 (ISSN:09146164)
巻号頁・発行日
no.55, pp.19-30, 2011-03-31
著者
石田 陽介
出版者
金沢美術工芸大学
雑誌
金沢美術工芸大学紀要 (ISSN:09146164)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.4-5, 2008

塑造の制作は、まず粘土を用いて原型を作り、そこから石膏などで雌型を取り、その雌型に石膏や合成樹脂などでキャステイングして作品に仕上げるのが通例である。私自身も長年合成樹脂による成型(FRP)で多くの作品を手掛けてきた。この方法は軽くて丈夫で、慣れれば簡便な技法ではあるが、イミテーション的な感覚がつきまとい、制作(過程)と作品(結果)との間に少なからぬ違和感が生じる。そこで、近年はテラコッタ技法を用いて過程と結果が少しでも近付くように努力している。テラコッタの技法においても、雌型を取りそこに粘土を張り込んで像を作る方法(型押し)と、原型自体を分割し中をくり抜いていく方法がある。前者は粘土の厚みが一定になり、焼成の成功率も高く、万一焼成に失敗しても再度像を作り直すことができるが、制作時の粘土のタッチなどは甘くなる。後者は作り直しがきかないのでリスクはあるが、制作時の痕跡を直接感じ取ることができる。また焼成方法についても、電気窯やガス窯などで温度を管理しながら焼けば成功率は高くなるが、きれいに焼き上がり過ぎるため面白みという点では少なく感じる。一方「野焼き」では温度の管理が難しく、作品を損ねるリスクを伴うが、粘土の滋味のようなものが生まれる。今回紹介する作品は雌型を用いてはいるが、素材感をできる限り活かすために、原型自体をくり抜いてから再度型に押しつけるという方法をとり、焼成は「野焼き」によって行った。この野焼きは「縄文土器づくり教室」での体験をベースに自分なりにアレンジしたもので、特別な道具を用いず、できるだけシンプルなかたちで行うよう心掛けた。