著者
岩崎 雄也 Iwasaki Yuya
出版者
青山学院大学大学院経済学・法学・経営学三研究科
雑誌
青山社会科学紀要 (ISSN:02863901)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.1-17, 2019-03-01

人口減少社会を迎えたわが国において,生産性の向上が大きな課題となっている。そうした中,最低賃金の引き上げが企業の新陳代謝を促し,マクロの生産性の向上に寄与するとの見方があるが,最低賃金が生産性,とりわけ全要素生産性(TFP)にどのような影響を与えるのか,日本を対象に研究を行った例はほとんどない。一方,海外の先行研究では,最低賃金がTFPに与える影響について,理論分析,実証分析,ともに存在する。理論分析としてはAghion et al.(2003)があり,その理論モデルでは,最低賃金の上昇が企業の研究開発投資を減少させ,結果としてTFPが減退すると結論づける。また,実証分析は蓄積が多く,最低賃金がTFPに与える影響は正であるとする結果と,負であるとする結果の双方が存在する。これらの状況を踏まえたうえで,本論文では,最低賃金が企業のTFPに正と負いずれの影響を与えるのか明らかにすること,および,Aghionらの理論が日本で適合するのか否か検証することを目的として実証分析を行った。対象期間は1986年から2007年,対象業種は製造業とし,分析にあたっては都道府県別の完備パネルデータを使用した。結果として,日本の製造業において,最低賃金の上昇は企業のTFPに負の影響を与えることが明らかになった。また,バブル崩壊後の「失われた10年」の時期における負の影響は,Aghionらの理論モデルと整合的であることが分かった。