著者
酒井 奈緒美 森 浩一 小澤 恵美 餅田 亜希子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.16-24, 2006-01-20
被引用文献数
1 2

吃音者がメトロノームに合わせて発話すると, 流暢に話せることが知られている.その現象を利用し, 多くの訓練のなかでメトロノームが利用されてきた.しかしその効果は日常生活へと般化しづらいものであった.そこでわれわれは国内で初めてプログラム式耳掛型メトロノームを開発し, 日常生活場面において成人吃音者へ適用した.耳掛け型メトロノームは, 毎分6~200の間でテンポを設定でき, ユーザーによる微調整も可能である.また音量は20~90dBSPLの間の任意の2点を設定でき, ユーザーが装用中に切り替え可能である.1症例に対し約3ヵ月半, 発話が困難な電話場面において適用したところ, 電話場面と訓練室場面において吃症状の減少が認められた.本症例は発話が困難な電話場面を避ける傾向にあったが, 耳掛け型メトロノームの導入により, 積極的に電話ができるようになった.また自己評価の結果から, 症例自身は吃頻度以外の面での改善を高く評価していることも認められた.
著者
磯貝 豊
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.139-152, 2007-04-20
参考文献数
21
被引用文献数
1

硬性喉頭鏡と喉頭ストロボスコープの組み合わせは, 適正なf値 (焦点距離) のアダプターレンズとCCDカラービデオカメラ (画質は, 単板CCDより3板CCDのほうが優れている) を接続し, ホワイトバランスを適正に調整することによって, 適正なマッチングが可能である.<BR>ビデオ電子スコープと喉頭ストロボスコープの組み合わせは, 両者のメーカーが異なるうえに, ビデオ電子スコープは自社製連続光源の使用を前提としているため, 光源の色温度, 光源の明るさ, ストロボ光源へのライトガイドの差込口の径と最適位置などが異なっており, ホワイトバランス調整やライトガイドの位置調整に気をつける必要がある.<BR>現状では, CCD自体の画質は, 硬性喉頭鏡と組み合わせて使用する1/3型CCDのほうが, ビデオ電子スコープの先端に組み込んだ極小サイズのCCDより画質が優れているが, ビデオ電子スコープには, 経鼻的に挿入でき, 硬性喉頭鏡よりずっと声帯に近接できるというメリットがある.両者の特質を生かして使い分けることが肝要である.
著者
宇野 彰 新家 尚子 春原 則子 金子 真人
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.185-189, 2005-07-20
参考文献数
15
被引用文献数
13 22

レーヴン色彩マトリックス検査 (RCPM) を小児用知能検査として活用することを目的として検討を行った.対象は東京近郊40万人都市における, 2つの公立小学校の2年生から6年生の通常学級の児童, 合計644名である.その結果, 2年生の平均点は29.5点, 1標準偏差は5.6であった.学年が上がるにつれ平均点は上昇し, 6年生では平均点33.0点, 1標準偏差は3.8であった.クロンバックのα係数やWISC-IIIとの相関係数から, 小児においても信頼性や妥当性の高い検査であることがわかった.以上の結果から, RCPMは小児の知能検査として有用であると思われた.
著者
南雲 直二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.132-136, 2008-04-20
参考文献数
7

People with disabilities experience two kinds of distress. One originates directly from their disability or disabilities, and the other derives from the social treatment accorded to them as a disabled individual. The palliative method for coping with the former type of distress is acceptance of one's disabilities, although this may involve numerous methodological difficulties. The palliative method for dealing with the latter form of distress is social acceptance of persons with disabilities. Many approaches have been devised to secure such social acceptance, and collectively these have resulted both in improved social participation by persons with disabilities and, as a by-product, easing of the distress originating from their disabilities.
著者
野口 由貴 小澤 由嗣 山崎 和子 今泉 敏
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.269-275, 2004-10-20
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

対人コミュニケーションに問題をもつ児の早期発見に役立つ検査手法を開発するため, 小学生, 中学生, 成人, 計339名 (男性173名, 女性166名) を対象に, 話し言葉から相手の心を理解する能力を調べた.言語属性として辞書的意味が肯定的な短文と否定的な短文を, 感情属性として肯定的な感情と否定的な感情をもって, 女性1名が話した短文音声を刺激として, 言語課題では言語属性を, 感情課題では感情属性を判断した.その結果, 言語属性と感情属性とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して, 話者の発話意図つまり心を理解する能力が小学生から中学生にかけて上昇し発達するものの, 中学生になってもなお成人の能力には達しないことがわかった.この結果は, 言語属性と感情属性とを適正に分離・統合して話者の発話意図を理解する能力が, 誤信念課題などによる心の理論テストで予測される能力よりも遅く成熟するものであることを示唆する.