著者
長谷川 耕二郎 福田 富幸 北島 宣 尾形 凡生
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:03890244)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.41-52, 2004-12-31

カキ枝の永久および一時結縛処理が雄花と雌花の花芽分化・発育と花芽数,新しょうの乾物率ならびに翌春の雄花と雌花の着花数および新しょう生長に及ぼす影響について調査した.なお,給縛処理は11年生と17年生の'西村早生'および'禅寺丸'を供試して,2年枝単位に2000年の満開前2週間に1.6mmの被覆線を用いて行った.一時結縛処理は60日後に被覆線を取り外し,永久結縛処理は被覆線を取り外さなかった.1. 2年枝の永久および一時結縛処理により,'西村早生'ど禅寺丸'における雌花の花芽はそれぞれ6月5日と6月8日に分化し,一方,対照区の雌花の花芽はそれぞれ6月15日と6月18日に分化した.雄花の分化時期も一時結縛および永久結縛区により,10日程度早まった.2. 永久および一時給縛処理により,'西村早生'と禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は6月中旬または下旬までにがく片形成または花弁形成の段階に発達したが,7月中旬以降3月初旬までの花芽の発達は花弁形成以降の段階までは進まず,両結縛処理区と対照無処理区との差違はなくなった.3月初旬から3月下旬にかけて,'西村早生'ど禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は雄ずいおよび雌ずい形成期に発達したが,処理間の差異はなかった.3. 永久および一時結縛処理により,花芽分化期以降の'西村早生'雌花ど禅寺丸'雌花と雄花の花芽数は対照区に比べて増加した.4. 永久および一時結縛処理により,'西村早生'および'禅寺丸'の新しょうの乾物率はともに6月上旬以降に対照区に比べて増加し,また,両品種の葉の乾物率は結縛処理により,5月下旬以降著しく高まった.5. '西村早生'および'禅寺丸'両品種において,永久および一時結縛処理により,翌春に萌芽した新しょう上に着生した雌花と雄花はともに増加したが,処理にかかわらず,上位の新しょうでは雌花,下位の新しょうほど雄花の着生が多かった.新しょう長は両結縛区で短くなったが,永久結縛区は一時結締区に比べて,抑制の程度が著しかった.以上のことより,'西村早生'および'禅寺丸'において,満開前の2年枝結縛処理は結縛の取り外しの有無にかかわらず,新しょうの乾物率の増加を促進し,両品種の花芽分化が早まり,花芽数が増加するものと考えられた.なお,結縛を取り外した方が取り外さないよりも,新しょうの発育にとって好適と考えられた.