著者
福森 雅史
出版者
近畿大学英語研究会
雑誌
Kinki University English Journal = 近畿大学 英語研究会 紀要 (ISSN:18827071)
巻号頁・発行日
no.5, pp.47-65, 2010-01-01

「個の時代」が強調されて久しい今日、我が国ではオリジナル・テキストの作成やオフィス・アワーの活用など個の活動が大学教育で盛んに求められている反面、語学教員として「個」が如何にあるべきか、という研究・教育姿勢については必ずしも重視されているようには感じられない。そこで、本論文では、大学教育における語学教員として各自の研究が教育に反映されるべき姿勢のあり方を、まさに「個」を表す表現である英語再帰代名詞 SELF およびスペイン語再帰代名詞 si/se を通じて提議する。特に、この「その1」では、「oneselfは主語が指示する物と同一物を指示する」とする先行研究の問題点を認知言語学理論も交えて指摘する。
著者
森本 道孝
出版者
近畿大学英語研究会
雑誌
Kinki University English Journal = 近畿大学 英語研究会 紀要 (ISSN:18827071)
巻号頁・発行日
no.5, pp.67-78, 2010-01-01

サム・シェパードの『地獄の神」のラストシーンでは、エマがただ一人舞台に残り、家に起こった危機を夫に知らせるためにポーチのベルを鳴らす。彼女の意思に反し、家の中はウェルチによってアメリカへの愛国心を示すもので満たされていくが、これはアメリカ国民が知らぬうちに愛国心を強要されている状況をも示す。この劇のタイトルはプルトニウムの語源である地獄神プルートを示すが、この物質の持つ見えざる浸透力はアメリカ国民に蔓延しているアメリカ国家の持つ力への盲目的な信念の忠実なメタファーとなっている。作中でヘインズが言うように、個人と国家の問題の境界は消失し、エマのベルはアメリカ国民の現状への警鐘の役目を担っている。これらの点から、この劇をもってシェパードがより視野を広げ、政治的視点をこれまでより明確に示していることを指摘したい。近畿大学非常勤講師