著者
岡野 雅雄
出版者
文教大学
雑誌
湘南フォーラム:文教大学湘南総合研究所紀要 (ISSN:18834752)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.57-63, 2011-02

本稿では、現今のゲーム研究(game studies)を参照しつつ、インターネット広告で用いられるゲームについて、考えてゆきたい。 ゲーム研究は、まだ歴史が浅いものの、特に欧米を中心に急速に形成されつつある。その理論的な背景はさまざまであるが、記号論的な視点が重要な役割を果たしている。たとえばMyers(2010)は、「ビデオ・ゲームは、科学としての記号論の観点からは、記号とシンボルのコード化された操作を通して意味を生成し変換する記号的機構(semiotic mechanism)である」と述べている。 Saussure(1916)の流れをくむ記号論についてみると、Guiraud(1971)は、記号としてのゲームの特徴として、コード化されており規則があること、ゲームの中では我々はある役割を演ずることを挙げている。さらに、その記号の分類体系においては、ゲームを「社会的記号」の一つに位置づけ、ゲームを以下の3つに下位分類している。 1)知的で科学的:なぞなぞ・クロスワード・パズルなど 2)実際的で社会的:ままごと・チェスなど社会的状況の模倣 3)感情的で美的:サッカー・レスリングなどのスペクタクル そして、ゲームの機能として、ままごと遊びで役割・職業を学ぶ場合にみられるような「学習」、試合でいちばんふさわしい者を選ぶ場合にみられるような「選別」、欲求不満を解消させる「娯楽」を挙げている。 Guiraudの体系はゲームの基本的な特質は押さえていると考えられるが、ビデオ・ゲーム以前のものであり、多様な形で発達した現在のゲームを把握するためには補わなくてはならない点が多い。ことに、言語中心に理論が組み立てられている点が、多くの感覚様相(モダリティ)を巻き込んで行われるゲームには適合しにくい。 その欠点を補うものとして、記号論の中でも「社会記号論」からのアプローチ(Kress & van Leeuwen, 1995;Kress & van Leeuwen, 2001)が好適な理論的な基礎を提供してくれている。Kressらは、Saussureの流れをくむ言語中心の記号論を批判し、記号過程は視覚・聴覚ほかの感覚が統合された「マルチモーダル」なものであり、言語はその一部として働くものと考えている。これは、デジタル・ゲームが、ディスプレーに表示される視覚的記号、言語的メッセージ、音響効果・音楽、コントローラーを操作する筋肉の動きなど、多くの感覚様相を巻き込んだものであることを考えるときに特に妥当性が高いモデルとなっている。 また、社会記号論が相互作用性(interactivity)を重視する点も、デジタル・ゲームを考える際には好適なものとなっている。オンラインで提供される広告ゲームも、デジタル・ゲームのひとつとして、相互作用性を抜きにして考えることはできない。このような観点からみると、コード化・コード解読からなる過程であるゲームが、webのもつ動的特性を利用してさらに高度な相互作用性を手にして、新しい遊戯的な形式をとったものの一つが広告ゲームである。以下では広告ゲームについて考えたい。