著者
西 菜穂子
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

政治学における既存の視点変換としてのルーマン政治システム論の意義は、ルーマン自身の権力理論の慎重な解釈のみならず、従来の権力理論の構造に対するルーマンの批判の要点を明確にすることによってはじめて明らかなものとなる。かかる認識に基づき、これまでの研究のまとめとして「コミュニケーション・メディアとしての権力に向けて-初期ルーマンの古典的権力理論批判-」をテーマに学会発表を行い、論文を執筆した。本論文では初期著作『権力』の準備的作業として執筆された論文「古典的権力理論批判」(1969)において展開された諸論点を敷桁し、中・後期以降の社会システム論の概念装置を適宜参照することによって、従来の権力理論との構造・概念的相違からコミュニケーション・メディアとしての権力という視座の性質を浮かび上がらせることを試みた。この試みはルーマン社会システム論の社会理論史におけるゼマンティーク的転換を明らかなものとするためのひとつの導入点ともなったと考えられる。上述の論文を布石に、後期の政治システムに関する記述も参照し連関させうつ『権力』の再解釈を試みることによりて、コミュニケーション・メディアとしての権力のオートポイエーシス的政治システムにおけるはたらきについて考察を深めた。この作業を土台に現在『権力』の解釈をテーマとした論文を執筆中である。さらに秩序形成という観点から政治学において重要な問題となる倫理・規範について「道徳の反省理論としての倫理学」というルーマンの視点に関する記述を精読・解釈し、現代社会における秩序形成にたいして倫理学の持つ意義を考察した。以上、ルーマンの政治システムの核となる議論である上述の作業を段階的に進めた。

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[Luhmann] 博士課程は一橋、と。

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