著者
藤原 伸介 SIDDIQUI Masood Ahmed
出版者
関西学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

原始生命の低温適応は多様性獲得と密接な関係があったと考えられる。本研究では超好熱菌には低温で誘導される分子シャペロンが存在すると考え、生育限界下限の温度で培養したときに誘導されてくるタンパク質の中から分子シャペロンとしての機能をもつものの探索を試みた。超好熱菌にThermococcus kodakaraensisを用い、生育下限限界温度で発現するタンパク質について二次元電気泳動を利用したプロテオーム解析を行った。70℃で培養した細胞中には90℃で培養した時には見られないいくつかのタンパク質が見られた。このうち、発現の傾向が顕著なものを選び、アミノ酸配列分析を行ったところ、ひとつは分子シャペロニンのひとつCpkAであることが確認された。これまでの研究からCpkAは低温特異的な分子シャペロニンではないかと予想されていたが、今回の実験によりそのことが確かめられた。現在、この遺伝子を破壊したcpkA遺伝子欠損株の構築を行っている。CpkAのホモログを他の好熱性生物で調べたところ、生育温度が下がるに連れてゲノム上に複数のオルソログをパラロガスに有する傾向が見られる。例えばThermococcus kodakaraensisよりも生育温度が高い同じ目のPyrococcus属や同じEuryarchaeota門で生育温度の高いメタン菌Methanococcus jannashiiではいずれもオルソログはひとつしか存在しない。一方、同じ、Euryarchaeota門でも生育温度の低い菌は複数のCpkAホモログをパラロガスにもつ。これらは進化の過程でゲノム上で派生したパラログと考えられた。以上の知見はCpkAは超好熱菌が低温適応するために獲得した分子シャペロン(シャペロンニン)であったことを強く示唆する。

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こんな研究ありました:超好熱菌シャペロニンに関する基礎的研究及びそれを用いたタンパク質安定化システムの構築(藤原 伸介) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/02F00204
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